貯水タンクの地震被害調査と対策 | 中央大学 平野研究室

制振装置開発

既存貯水槽の耐震性能の向上 浮体式波動抑制装置の開発

東日本大震災や熊本地震の調査で、最新の設計基準で製作されていた貯水槽が壊れていることに鑑み、既存の貯水槽の耐震性能の向上を目指し、施工の容易さ、経済性、衛生面を追求しての制振装置の開発を行って来た。
これらの研究より、既存の貯水槽の耐震性能の向上に従来から行われている外壁パネルの補強ではなく、貯水槽内部に8の字形パネルを組み立てる方式での貯水槽用浮体式波動抑制装置を設置することで耐震性の向上を計ることができる事を明らかにした。

 

 

浮体式波動抑制装置
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制振メカニズム

この制振メカニズムは、液体が制振装置のスリットを通過するときに抵抗力が生じ、水の粘性が見掛け上大きくなることを利用したものである。これにより減衰が付加され、流速を抑えて波高を低減する。

 

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制振効果

3m×3m×3mのタンクに水深2.7mまで水を入れ、スロッシング1次モードである0.47Hz、振幅±7mm、20波の正弦波加振による応答波高の比較した。最大波高は非制振時に401mmを示したものが、制振装置を付加することで132mmまで約67%波高を低減させている。この結果から浮体式波動抑制装置の効果を確認した。

 

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実機受水槽での実証実験

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浮体式波動抑制装置の制振性能〜スロッシング1次モード(0.47Hz 変位±10o)〜

 

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材質・施工性

制振装置の材料は、柔軟性のある耐塩素性を有する特殊ポリエチレン樹脂で型した板状のダンパー部材とそれ8の字を組むための接続部材で構成されている。これを8の字状に曲げてSUSボルトで接合し、現地で製作・設置するものである。これらを貯水槽外部で組み立てた後、直径φ600程度の点検用のマンフォールホールから水槽内部へ直接入れる。これはこの材料の一つの特性である柔軟性からできることであり、水槽内部での作業を極力無くす工夫がなされている。この施工方法の場合、30tクラスのタンクでダンパーパネルを内寸に応じて自在に曲げ、連結部位をボルトで固定するだけなので、施工時間が30分程度と短時間で完了する。

 

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組み立てはボルトで接合するだけ
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施工事例

FRP製パネルタンク
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ステンレス製パネルタンク
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命の水を守るための耐震対策

熊本地震においても貯水槽に被害が出たことに鑑み、毎回大きな地震が起きる毎に貯水槽の被害が生じている。そのために貯水槽の耐震性向上は、南海トラフで発生する巨大地震に備えるために必須の項目である。貯水槽にスロッシングやバルジング現象が発生しないような制振対策を施すことが、命の水を守るための「減災」に繋がることになる。
最後に、本制振装置は最新の研究成果より、最大波高を1/3程度まで抑え、かつ地震によるタンクへの負荷を半減することを可能とした。さらに矩形のみならず円筒形や大型配水池へも適用可能である。また本制振装置は、2014年8月に横須賀市民病院に初施工以来、病院、老人ホーム、大型マンション等全国で50機以上の施工実績を既に有している。
研究成果は本学所有の特許として産学協同で特許申請中である。

参考文献

曽根龍太,小野泰介,井田剛史,平野廣和,佐藤尚次:矩形断面貯水槽におけるスロッシング制振対策の検討,土木学会論文集A2分冊(応用力学)特集号,Vol.16,pp.833-843,2013.8.

 

平野廣和:巨大地震に備えての貯水槽の耐震性向上の必要性−既存貯水槽用の施工簡単かつ安価な制振装置の開発−,給排水設備研究,Vol.31,No.3,pp.4-9, 2014.10.

 

小野泰介,曽根龍太,井田剛史,平野廣和,佐藤尚次:受水槽のスロッシング対策のための浮体式制振装置の開発,土木学会論文集A2(応用力学),Vol.70, No.2, pp 621-629, 2015.2.


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