貯水タンクの地震被害調査と対策 | 中央大学 平野研究室

原因究明

貯水槽破壊の原因の究明と今後の対応

貯水槽はなぜ大きく壊れたのかに関し、2012年から産学連携で共同研究グループを結成し、貯水槽破壊の原因の究明と今後の対応、地震の周期を考慮した耐震対策の検討を開始した。

 

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実機を使用した振動実験

2012年に開始した振動実験は、愛知工業大学の振動装置を用いて行った。これに3m×3m×3mの実機ステンレスパネル製タンクを設置した。
このステンレスパネル製タンクは、1997年の新耐震仕様で設計されたものであり、貯水槽設計基準の最新のものとなっている。組み立て方法は、パネルを内側のみの片側溶接接合で外形を構成し、内部補強により剛性強度を得ている。なお、震災時においてこの形式の貯水槽は、水漏れや全壊等の事例が既に報告されている。

 

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ステンレスパネル製タンクの中に25tの水を入れ、スロッシング発生周期である周期2秒の正弦波で震度3程度の揺れを再現してみると、加振を開始してからから約1分でステンレスパネル製タンクの天井を水が叩く衝撃音が聞こえ始める。また、起振を停止してからも10分間以上タンク内での水の揺動振動が続く。ステンレスパネル製タンクの内部では、水が大きく波打っているのが判る。この力が天井部分や側壁面に作用して、溶接部などが破壊されていくという形で、そこから水漏れや損傷が起きると推定される。

 

タンク内部の映像 1次モード 加振方向角45°振幅8mm (7.58Gal)

 

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破壊過程の実験

2013年12月からは中央大学と愛知工業大学が共同で愛知工業大学耐震実験センター内に新設した専用の大型振動装置を用いて実験を行った。
地震時の波形を入力波形として、兵庫県南部地震神戸海洋気象台で計測された波形の内、南北波成分を用いて貯水槽が破壊に至る過程を確認した。ただし、振動台の能力の関係から入力波形振幅を50%に縮小したものを入力波とし、これは加速度ベースで実際の地震の1/3程度のエネルギーであり、かつ加振方向は一方向であるのでさらに全体の加速度は小さくなる。そのため、加振を連続して繰り返し行い、水漏れが生じたのは12回目であった。

 

 

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実験終了後、実験前と比較して貯水槽本体に損傷や変形が生じた。中段パネルと下段のパネルとの接合部から、漏水しているのが確認された。ここは、内側に隅肉溶接を行っている所であり、かつ補強が施されている場所で剛性の高い部分と低い部分との接合点でもある。

 

ステンレスパネル製タンクの破損・変形箇所
(a)漏水部分
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SUS製パネル内部の溶接部に生じたクラック
(b)隅肉溶接部のクラック
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このような漏水が下方パネルで見られたことから、ステンレスパネル製タンクではスロッシング現象のみならずバルジング現象による影響を受け、溶接部に疲労クラックが生じて漏水に至ったと考えられる。バルジング振動は、SUS製の壁面パネルと内容液の連成振動であり、下図に示すような変形モードで貯水槽パネルがスロッシングの固有振動数の7倍程度で振動した。その結果、溶接部で疲労亀裂を発生し易くなったと考えられる。

 

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(c)内部補強材(平板)の座屈
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実験終了後の内部の補強材の状態である。これより、内溶液が揺動したことで本来は引張力のみを考慮して設計されていた補強材(平板構造)に貯水槽の変形で圧縮力が作用し、最終的に補強材が座屈に至ったと考えられる。

 

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隅角部のパネルのつなぎ目の間隔が実験開始時で10mmであったものが実験終了時には12mmに開いていることが確認された。ここは、最も高い波高が計測されたポイントであるので最も大きな力が作用したと考えられる所であり、ここで変形が確認されたことになる。

 

(d)隅角部接合部の変形
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参考文献

厚生労働省健康局水道課:東日本大震災水道施設被害状況調査報告書(平成23年度災害査定資料整理),2012.12.

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