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Susumu Hirano
Professor, Faculty of Policy Studies, Chuo
University (Tokyo, JAPAN)
Member of the New York State Bar (The United
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【未校閲版】without proof
White Buffalo v. University of Texas
〜迷惑メール規制連邦CAN-SPAM法の専占条項の射程がISP自主規制にまでは及ばないとされた事例〜
はじめに
迷惑メールを規制する連邦法が本年初頭から施行されているが、その解釈を巡る裁判例が早速出ているので紹介してみよう。
White Buffalo事件の概要
【事件名】 White Buffalo Ventures, LLC.v. The University of Texas at Austin, 2004 U.S. Dist. LEXIS 19152.
【裁判所】 連邦地方裁判所テキサス州西部地区担当
【判決日】 2004年3月22日
【事件の概要】 被告テキサス大学オースチン校は一般的に勧誘を禁じるポリシーを有していて、大学のネットワークの使用についても非招請電子メール(「迷惑メール」あるいは「スパム」)や商業目的の頒布を禁じると規定していた。スパムがシステム上の警告、フィルタリング、あるいはユーザーからの苦情等で発見された場合にはブロック等の施策を採る旨も規定し、同大学はこれまでに1,000以上の送信元から来るスパムをブロッキングしてきた。原告ホワイト・バッファローはネット上の出会い系サービス運営業者であるが、テキサス州の情報公開法により被告の電子メールアドレスを入手した上で、「utexas.edu」のドメイン宛に出会い系サービスを勧誘する電子メール55,000通程を送信。その迷惑メールについてユーザーから複数の苦情を受けた被告は、原告に対してスパム送信自粛を要請したけれども、その要請を原告が無視したので、被告は原告から送信される電子メールをブロッキングした。そこでホワイト・バッファローがブロッキングの差し止めを求めてテキサス大学を提訴。その根拠として原告は、被告の自主規制が迷惑メール規制連邦CAN−SPAM法の専占-- preemption --条項に反し、言論の自由の保障(連邦憲法修正第1条)に反し、かつ、法の下の平等原則(同修正第14条)にも反する等と主張。両当事者は互いにサマリー・ジャッジメントを申し立てた。なお、被告が原告の電子メールをブロッキングしたのはその内容が出会い系サービスだったからではなく、あくまでもそれがスパムだったからである旨を、被告の証拠が示している。
【主な争点】 CAN-SPAM法の専占条項にもかかわらず、同法の規制より厳しい自主規制を州立大学たるテキサス大学が採用できるか(専占条項の射程)? その自主規制は言論の自由または法の下の平等に反しないか?
【判決】 専占条項にかかわらず自主規制は許され、被告による自主規制も言論の自由・法の下の平等原則に反しない。原告のサマリー・ジャッジメント申し立てを棄却し、被告のサマリー・ジャッジメントを認容。
【法規・裁判例・学説】
- CAN-SPAM (the Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketings Act of 2003), 15 U.S.C. §7701 et seq. (スパムの送信元や表題等に関する欺瞞を禁じたり、受信者からの再送信禁止要請を尊重する旨の連邦法規制。専占条項が盛り込まれており「supersedes any statute, regulation, or rule of a State or political subdivision of a State that expressly regulates the use of electronic mail to send commercial messages, except….」と規定。しかし同時に「State laws not specific to electronic mail, including State trespass, contract, or tort law」についてはpreemptしないと明記。さらに「[The CAN-SPAM Act should not be] construed to have any effect on the lawfulness or unlawfulness, under any other provision of law, of the adoption, implementation, or enforcement by a provider of Internet access service of a policy of declining to transmit, route, relay, handle, or store certain types of electronic mail messages」と明記。加えて、連邦法では取り組めないスパムの及ぼす負の効果と戦うための工学技術の開発と採用の必要性を認識する旨の規程も設けている).
- S. Rep. No. 108-102, at 2-3, 6-7, reprinted in 2004 U.S.C.C.A.N. 2348 (スパムの負の影響等に関する議会の議事録).
- Central Hudson Gas & Electric Corp.v. Public Service Commission, 447 U.S. 557 (1980)(商業広告規制の合憲性に関する4要素の「セントラル・ハドソン」判決テスト。@誤誘または違法ではない広告を規制することに対し、A政府が実質的な利益を有した上で、Bその利益を直接促進し、かつC広範囲に過ぎる規制ではないことが必要).
- Village of Willowbrook v. Olech, 528 U.S. 562 (2000) (同様な立場の人に比べて故意に異なって扱われ、かつその差別的取り扱いについて合理的理由が欠ける場合に、法の下の平等に基づく請求が可能であると明確化).
【判決理由】
<CAN-SPAM法の専占の射程について> 原告は、CAN-SPAM法の規制よりも厳しい被告の自主規制が同法の専占条項に反していると主張する。しかしCAN-SPAM法は「State laws not specific to electronic mail」に対しては専占が及ばないと明記しており、被告による自主規制は電子メールに限らずあらゆる形態の勧誘を禁じているから専占の射程外と解釈しうる。さらに、そもそも被告による自主規制が、CAN−SPAM法の専占の対象とされる「any statute, regulation, or rule of a State or political subdivision of a State」に該当するか否かが不明確である。たとえもしこれに該当すると仮定しても、被告は学生に対する“プロバイダー”であることが明らかであるから、CAN-SPAM法上、自主規制を施行する権限が明確に付与されている。同法の立法時の議事録から大量のスパムが及ぼす負の効果を議会が懸念していたことは明らかであり、その負の効果と戦うための工学技術の開発と採用の必要性を認識する規程を条文にわざわざ設けていることから判断しても、テキサス大学のような州の機関が防御のためにスパム・フィルター等の装置を用いることを同法が排除していないと解釈される。
<商業広告規制の合憲性> まず言論の自由の保障の争点について、議会の議事録からも明らかなように、スパムは企業等へ負の影響を及ぼすのと同様にテキサス大学からも職員・学生等の時間や生産性を奪うから、これに対して防衛することについて被告大学は「セントラル・ハドソン」判決テストの要求する「実質的な利益」を有している。次に被告の採用するフィルタリング機能は、完全にスパムをブロックできず不完全であるけれども、ほとんどのスパムをブロックするから、現時点で利用可能な工学技術に照らせば実質的な利益を直接促進[し、かつ規制範囲が広範囲過ぎるというわけでもない]。
法の下の平等の争点について、被告がシステム上の限界から全てのスパムをブロックできていなくても、認識するに至った全てのスパムをブロックするポリシーは有しているから、原告のスパムとブロックから漏れた他のスパムとの異なる扱いについて合理的な説明が存在しており、法の下の平等違反な規制ではない。
おわりに
日本にも存在する迷惑メール規制法の3年目の見直し時期が来年にも到来する中で、米国CAN-SPAM法の解釈は参考になろう。
【未校閲版】without proof