ペルマン 対 マクドナルド社(III)事件の要旨 

〜訴状の記載は十分であるとして請求棄却の下級審判断を覆した事例〜

中央大学 教授 (総合政策学部)
米国弁護士 (NY州)
平野 晋

関連ページは「ペルマン対マクドナルド社・第一事件」「ペルマン対マクドナルド社・第二事件」「ファーストフード(外食)により肥満症を生じさせた損害に対する賠償責任の研究」及び「製造物責任法の研究」及び「熱いコーヒーは欠陥であると主張する製造物責任の研究」参照。

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Susumu Hirano
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【未校閲版】without proof

First Up-Loaded on Feb. 1, 2005.

はじめに

既に紹介した「ペルマン対マクドナルド社(I)」「ペルマン対マクドナルド社(II)」事件に引き続き、控訴審での検討結果を紹介しましょう。連邦地裁の「第二事件」で修正訴状も棄却されていたπは、結局、当控訴審にて救済され、再度連邦地裁にて審理継続となりました。因果関係に関する訴状の記載は詳しいものでなくても十分で、その辺りの情報はディスカバリー(開示手続)にて収集されるべきだ、と控訴審法廷意見(以下)が述べています。

Pelman III事件の概要

【事件名】 Ashley Pelman by her mother and natural guardian Roberta Pelman, Roberta Pelman individually, Jazlyn Bradleym her father and natural guardian Israel Bradley, and Israel Bradley, individually v. McDonald's Corp., 2005 WL 147142  (2nd Cir.).

【裁判所】 連邦控訴裁判所第二巡回区

【決定日】 2005年1月25日

【事件の概要】

Pelman II事件に於いて原告(π)の請求棄却が決定されたところ、πは当連邦控訴審に対して不服を申し立てた。

【主な争点】

ファーストフードの過剰摂取に因る責任を求める訴状には、どの程度の具体的な記載をしなければ請求棄却申し立てを生き残ることができないか?

【決定】

NY GEN. BUS. L.(NY CONSUMER PROTECTION ACT)349条上の請求について、因果関係に関する具体性を欠く記載でも、簡素化された告知訴答(notice pleading)の原則上許容されるから、原審は同条上のπの請求を誤って棄却したと判断されるので、原審の決定を破棄し事件を更に進めるよう命じて差し戻す。

【主な法規・裁判例・学説】

【決定理由】

πは、349条に基づく請求の棄却を争っている。349条は、実際にπが凾ノよる該不正慣行を「信頼した」(reliance)旨の証拠までは要件としていない。州制定法上の請求である349条上の請求は、コモン・ロー上の詐欺(common-law fraud)に於いて求められるのと同じ程度の要件は要求されていないのである。従って、349条の請求では、訴状に、連邦民事訴訟規則第8条(a)が求める、通知の目的を達成すれば足りる程度の簡素な記載要件("the bare-bones notice pleading requirements of Rule 8 (a)")さえ満たせば十分である。 【評者注*】

【評者注*】 notice pleadingとは、詳細な事実情報を求めるfact pleadingと異なり、反対当事者(本件では凵jに対してその者が答弁を形成できる程度の請求と救済を記載さえすれば十分であるというものです。

原審は349条がπによる該不正慣行への信頼の要素までは要件となっていないことを認識しながらも、πがマ○ド○ルドの食品と被害との間の因果関係を十分に示さなかったことを理由に、請求を棄却している。すなわち、以下のような問題に対してπが答えることが不可欠であると考えたのである。

[マ○ド○ルド以]外にπは何を食べていたのか? どれだけ運動をしていたのか? 家族に於いてマ○ド○ルド製品によって生じたと主張されるような疾病が存在するのか? この追加的な情報が無い限り、[兢マ○ド○ルドは自らの食品がπの肥満の原因であると決めるに足る十分な情報を有さないのである。

これは、しかし、開示手続の対象にこそふさわしい種類の情報であり、連邦民事訴訟規則第8条(a)の求める限定された訴答要件を満たすために求められるものではない

Swiekiewicz」事件判決に於いて連邦最高裁が全員一致にて述べているように、

自由な開示手続ルールとサマリー・ジャッジメント申立手続を前提として、[連邦民事訴訟規則第8条(a)の]簡素化された告知訴答(notice pleading)基準と成っているのだ。

従って、349条の請求に関する限り、修正訴状は連邦民事訴訟規則第8条(a)の要件を十分に満たしている。

よって、349条違反を主張する修正訴状の請求原因I〜IIIを棄却した原審の決定を破棄し、当法廷意見に一致させて事件を更に進めるように差し戻す。

【未校閲版】without proof

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