ペルマン 対 マクドナルド社(II)事件の要旨 

〜欺瞞性や因果関係に関する具体的記載が欠けているので請求棄却された事例〜

中央大学 教授 (総合政策学部)
米国弁護士 (NY州)
平野 晋

関連ページは「ペルマン対マクドナルド社・第一事件」「ペルマン対マクドナルド社・第三事件」「ファーストフード(外食)により肥満症を生じさせた損害に対する賠償責任の研究」及び「製造物責任法の研究」及び「熱いコーヒーは欠陥であると主張する製造物責任の研究」参照。

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Susumu Hirano
Professor of Law, Faculty of Policy Studies, Chuo University (Tokyo, JAPAN)
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【未校閲版】without proof

はじめに

既に紹介した「ペルマン対マクドナルド社(I)」事件に基づいて原告が修正した訴状を裁判所が棄却した決定を紹介しましょう。

Pelman II事件の概要

【事件名】 Ashley Pelman by her mother and natural guardian Roberta Pelman, Roberta Pelman individually, Jazlyn Bradleym her father and natural guardian Israel Bradley, and Israel Bradley, individually v. McDonald's Corp., 2003 WL 220527778 (S.D.N.Y.).

【事件の概要】

Pelman I事件に於いて請求棄却された原告(π)が訴状を修正して提出したところ、被告(凵jマ○ド○ルド社から請求棄却の申し立てが出され、πからは一部サマリー・ジャッジメントの申し立てが出された。

【主な争点】

ファーストフードの過剰摂取に因る責任を求める訴状には、どの程度の具体的な記載をしなければ請求棄却申し立てを生き残ることができないか?

【決定】

欺瞞的な宣伝等に関する具体的な指摘、及び被害との因果関係に関するある程度の具体的に詳細な記載をしなければ、請求棄却の申し立てを生き残れない。凾フ請求棄却申し立てを認容し、πのサマリー・ジャッジメントの申し立ては棄却。更なる訴状の修正は許さない。[すなわち請求棄却が決定。]

【主な法規・裁判例・学説】

【決定理由】

マ○ド○ルド・レストランの客が[食品を]購入する頻度に関するある調査によれば、マ○ド○ルドの客の内の72%は「ヘビー・ユーザー」であるとマ○ド○ルドが認識し、それは週に最低一度は来訪する客を意味している。そして客の内の22%は「スーパー・ヘビー・ユーザー」であり、月に十回は食べる客を意味する。スーパー・ヘビー・ユーザーは全ての販売の75%も占めている。従ってマ○ド○ルドによる多くの宣伝は、ヘビー・ユーザーとスーパー・ヘビー・ユーザーの消費を向上させるように仕組まれている。その目的を達成するために、マ○ド○ルドは、その食品が滋養に富んで健康なライフスタイルの一部に容易に馴染むという宣伝をしている、とπは主張する。

πは、NY州の消費者保護法違反を理由に、以下の3つの請求原因を示している。1つ目は、マ○ド○ルドの食品が滋養に富んで健康なライフスタイルに容易に馴染むと宣伝することでπらをミスリードしたというもの。2つ目は、マ○ド○ルドの食品が宣伝されている以上に健康的ではないことの開示を怠ったというもの。3つ目は、滋養に関する情報をどの店でも提供するというNY州司法長官との約束を違えて不正かつ欺瞞的な行為と慣行に関与したというものである。

消費者保護に関するNY州の制定法(N.Y. GEN. BUS. L. §§349,及び350)違反の要件は、(1)宣伝等が消費者に向けられたものであり、(2)重要な程にミスリーディングであり、かつ(3)その欺瞞的な慣行によってπが害を被ったこと、である。なおミスリーディングの基準は客観的なものであり、従って理に適った消費者ならばミスリードされたであろうことが必要である。なお、§349上はπが宣伝等を信頼したことは不要とされるけれども、§350上は信頼したことを示さなければならない。

<未成年者の部分以外の請求は出訴期限法により禁じられる>

πが引用・指摘するマ○ド○ルドの宣伝広告は、既に[3年の]出訴期限よりも以前の問題である。もっとも未成年のπらについては、出訴期限が停止されている。

<欺瞞的宣伝キャンペーンの一つに対して信頼したことをπはきちんと記載している>

§350上の請求原因についてはπが宣伝等を信頼したことを示さなければならないが、修正訴状では、以下の部分がその要件を満たしている。すなわち、フレンチ・フライについて、100%野菜油に変えてコレステロール含有量がゼロ・ミリグラムであるという全国的キャンペーンにつき、もしマ○ド○ルドが、ビーフを含んでいることを開示していたか、又は、そのような宣伝等が無かったならば、πはそれ程の量のフレンチ・フライを購入・消費しなかったであろうと主張している部分である。

<πはマ○ド○ルド食品の消費が被害の原因であったという主張を怠っている>

修正訴状ではπが、おおよそ一日当たり二食をマ○ド○ルドで注文し、週に5回通っていたという記載がある。しかし因果関係に関してはそのようなマ○ド○ルドでの摂取の頻度しか記載が無く、食べること以外の肥満になる他の沢山の要素の果たす役割に関する記載を欠いている。因果関係に関連する他の要素としては以下もあるはずだが、修正訴状はそれらの記載を欠いている。πはマ○ド○ルド以外に何を食べていたのか、πはどれだけ運動をしていたのか、マ○ド○ルド製品によって生じたような肥満の例が血統に存在するか。 ...

<πが信頼した宣伝キャンペーンは客観的には欺瞞的ではない>

凾フ行為によって理に適った消費者もミスリードされたことを客観的に示すことが要件である。πはマ○ド○ルドがフレンチ・フライに100%野菜油を用いてコレステロールがゼロ・ミリグラムであると表明しておきながら実際にはビーフ等とtans fatty acidsを含有していたと主張している。しかし実際の宣伝文句に於いてマ○ド○ルドは、「9 mg of choresterol」云々と述べている。しかもマ○ド○ルドは宣伝に於いて「a specially blended beef and vegitable」を用いているとも述べている。tans fatty acidsが含まれている点についても、コレステロール・フリーとかゼロ・ミリグラムのコレステロールしか含有しないと表明していたことは欺瞞に当たらない。なぜならマ○ド○ルドが反論するように、含有物が及ぼす効果について同社は何も表明していないからである。すなわち、脂肪分が含まれていない食品を摂取しても人は肥満になり、糖分の含まれていない食品を摂取しても血中糖分は上がり得るものなのである。

<更なる訴状の修正は認容しない>

πは既に修正の機会を与えられていたのみならず、適正な修正の仕方についての詳細も示唆されていたにもかかわらず再び棄却に至った。

πは、πの被害を生じさせしめた具体的な宣伝を主張し、かつ、被害とマ○ド○ルド食品消費との間の因果関係の詳細を示さなければならない

【未校閲版】without proof

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