ペルマン 対 マクドナルド社(I)事件の要旨 

〜公知の危険性に対してまでは賠償責任が及ばないと判断された事例〜

中央大学 教授 (総合政策学部)
米国弁護士 (NY州)
平野 晋

関連ページは「ファーストフード(外食)により肥満症を生じさせた損害に対する賠償責任の研究」、「ペルマン対マクドナルド社・第二事件」、「ペルマン対マクドナルド社・第三事件」、「製造物責任法の研究」、及び「熱いコーヒーは欠陥であると主張する製造物責任の研究」参照。

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Susumu Hirano
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はじめに

ファーストフードが肥満症を助長しているという社会的な批判運動の機運が欧米先進国で進む中、このトピックに関する代表判例を紹介してみましょう。

Pelman I事件の概要

【事件名】 Ashley Pelman by her mother, Roberta Pelman, Roberta Pelman, Individually; Jazlyn Bradley by her father, Israel Bradley, and Israel Bradley, Individually v. McDonald's Corporation, et al.,, 237 F.Supp.2d 512 (Jan. 22, 2003).

【裁判所】 連邦地方裁判所ニューヨーク南部地区担当

【判決日】 2003年1月22日

事件の概要】 

ブロンクス及びニューヨーク市在住の未成年者たる少女2名が、マ○ド○ルドによる行為及び事業慣行の結果、同地区のマ○ド○ルド店にて同社食品を[恒常的に]購入・摂取して、肥満症、糖尿病、冠状動脈心臓病、高血圧症、コレステロール摂取過剰、その他の健康上の害を被ったと主張して、親権者と伴に、ニューヨーク州内の同様な立場の者を代表するクラス・アクションとして、マ○ド○ルド社の関連会社に対し、損害賠償を求める訴えを、同州第一審裁判所(Supreme Court of New York)に提起。被告(凵jは州籍相違管轄権(diversity jurisdiction)[評者注*1]に基づき、事件の連邦地裁NY南部地区担当への移移を申し立てた。更に凾ヘ、請求棄却を申し立てた。原告(π)は事件の州裁判所への差し戻し等を申し立てている。

[評者注*1: diversity jurisdictionとは、連邦裁判所に管轄が認められる場合の一つであり、πと凾フ州籍が異なる場合である。本件ではπはNY州民であるけれども、凾フ一人マ○ド○ルド本社は他州(デラウエア州登記で主な事業地がイリノイ州)の法人である。かかる場合は、州裁判所での審理は他州の当事者(本件では凵jにとって不利になるおそれがあるので、連邦裁判所に於ける管轄権が肯定される。但し一定額(7万5,000ドル)以上の訴額でなければならない。(連邦裁判所では小さな事件は相手にしてくれないのである?!)]

【主な争点】 ファーストフードの摂取により肥満症に成ったと主張する訴訟が、請求棄却の申し立てを生き延びてトライアル到達に近付くためには、訴状にどこまでの記載が要求されるか。  

【決定】 具体的な記載が必要である。それを欠く本件訴状は全て請求原因に於いて棄却を命じる。当法廷意見発出から30日以内に訴状を修正した上での再提出を認容する。

【主な法規・裁判例・学説】

【決定理由】 (Sweet連邦地裁判事による法廷意見)

当訴訟はユニークかつチャレンジングな争点を提起するものである。マ○ドナ○ドがその製品をマーケティングして販売する際の慣行が欺瞞的であり、かつ、その欺瞞に因って同社製品を消費して来た未成年者が肥満になって害を被った、とπは主張する。個人の責任(personal responsibility)と常識的知識(common knowledge)、及び公衆の健康(public health)に関する問題、加えて、かかる争点に取り組む社会及び裁判所の役割の問題が、提起されている。
自己責任の範囲を決めるという争点が、法の多くの面でかかわってくる。すなわち、自身の面倒をみるという個人の自己責任と、他人が保護してあげる社会の責任との間に於いて、どこで線引きをすべきだろうか? 個人が何らか[の理由]で自らを守ることができず、かつ、そのような個人と何らかの他の存在 ---個人自身、他の個人、又は地球全体に広がる巨大企業---との間に社会がバッファーを提供する必要があるような状況に於いてこそ、法が創造されるのである。...。

237 F.Supp.2d at 516 (以上、評者による直訳).

法廷意見原文脚注2  一貫性と統一性のために、当法廷意見の起草者が薬品の刑事罰化に反対する意見を公にしていることを記録しておくべきである。[原文中の出典省略] この[当判事の]信念は、消費者がたとえ危険な物に関してでも適切な知識を有している限りは、消費者が自由にそれを購入する権利を有するべき..であるとの概念に由来している。[原文中の出典省略] 同様な論理は違法化された薬品...よりもはるかに危害の少ない...ファースト・フードにも当てはまるべきである

Id . at 516 n.2 (以上、評者による直訳)(強調は付加).

当裁判所意見は、消費者がハンバーガーやその他のファーストフード食品を食べることによる危険を知らないのでは無い限り、法的結果をそのような食品の消費に帰させるべきでは無いという原理によって導かれている。以下で議論するように、この指導原理はニューヨーク州に於ける製造物責任法と一致している。サー・フランシス・ベーコンが記したように、「知は力なり」("Nam et ipsa scientia potestas est,"<原文脚注3> or knowledge is power)なのである。...。もし消費者がマ○ド○ルドで食べることに因る健康への悪影響の可能性を知り(又は理に適って知っているべき)ならば、それにもかかわらず消費者がスーパーサイズなマ○ド○ルド製品の暴食によって自らの食欲を満たす選択をした場合に、マ○ド○ルドを責めることはできない。逆に、マ○ド○ルドのみが知っている危険性に対しては、消費者が自衛することを期待できない。従って、存立できる可能性のある如何なる訴訟に於いても必要な一つの要素は、マ○ド○ルドの製品に消費者の常識的知識には無い危険性が含まれているという点であるに違いない。以下に於いて議論するように、そのような危険性が存在することをπは特定して主張することを怠っている。
法廷意見原文脚注3  このフレーズは、1597年の『異端について』(De Haeresibus)に出てきたものであるが、直訳すると「知識そのものが力である」(for knowledge itself is power)となる。

Id. at 517-18 (以上、評者による直訳)(強調は付加).

マ○ド○ルドは、正しくも、当事件が...、レストランに対する同様な何千という「マック訴訟」("McLawsuits")を大量に生むであろうと指摘して来た。[そのような]訴訟[提起]の可能性は大きなものである。アメリカ人は毎年1,100億ドル超をファースト・フードに費やし、合衆国では毎日大人おおよそ4名中1人がファースト・フード・レストランを訪れるのである。エリック・シュロッサー著『ファーストフードが世界を食いつくす』(Eric Schlosser, Fast Food Nation)3頁(2002年)。  ...。
これらの[ファースト・フードによる肥満症訴訟提起という]争点と影響力は、当事件に対する公衆の興味を惹き、それは様々なレポートや当裁判所への手紙からテレビでの風刺にまでも至った。<原文脚注5>  肥満、自己責任、及び社会の責任はほぼ全てのアメリカ人消費者に影響するからである。
法廷意見原文脚注5   多くの反響は否定的なものであった。Debra Goldman, "Consumer Republic: common sense may not be McDonald's ally for long," ADWEEK. Ed 14 (12/02/02). 2002 WL 103089868 (...、「ハッピー・ミール」を生涯食べ続けた[自らの]責任を取ろうとしない訴訟好きな子供達とその親らのことを、大衆は信じられず、かつ侮蔑している。...。)...。 Neil Buck;ey, "Big Food faces grilling over America's obesity 'epidemic,'" Fin. Times at P20 (11/27/02)(...。「ファーストフード・レストランで供される食品を過度に消費すれば体重増加につながることは、室温以上のIQを有する者なら誰でも理解できるというのが現実である」...。)。 
Id . at 518(以上、評者による直訳)(強調は付加).
1999年に於いて、合衆国の大人の内の推定61%が体重超過になり、6歳から11歳までの児童の13%と12歳から19歳の青少年の14%も体重超過になっている。...。
肥満の人は、あらゆる原因による早死の危険性を50%から100%増加させて来た。合衆国内に於ける年30万人の死因は、現在、体重超過と肥満に関係している。「合衆国厚生大臣による2001年体重超過と肥満に関する報告書」(U.S. Surgeon General's 2001 Reports on Overweight and Obesity)で指摘されているように、「減少させないままに放置しておけば、体重超過と肥満がそのうち喫煙並の予防可能な病気と死亡の原因になるであろう。」

Id . at 519-20 (以上、評者による直訳).

πは、5つの請求原因を主張している。請求原因IとIIはニューヨーク州制定法たる消費者保護法349条及び350条(NEW YORK GEN. BUS. LAW §§349 and 350, CONSUMER PROTECTION ACT)等の違反に基づく。すなわち請求原因Iでは、マ○ド○ルドが食品内の成分を適切に開示しなかったと主張。請求原因IIでは、子供達を誘引すべく向けられたマーケティング・テクニックに焦点を当てている。請求原因IIIは過失責任に基づくようであり、マ○ド○ルドが高カロリー云々な食品を販売したことの過失を主張。請求原因IVではマ○ド○ルドが食品の成分等について警告を懈怠したことを主張。最後に、請求原因Vは再び過失に基づくようであり、中毒性のある食品をマーケティングしたことの過失を主張している。

事件を州裁判所に差し戻す申し立て> [省略] よって申し立てを棄却する。

<連邦ラベル表示法が州法上の訴えよりも専占--プリエンプト--するか否か>    「連邦滋養ラベル及び教育法」(FEDERAL NUTRITIONAL LABELING AND EDUCATION ACT, 21 U.S.C. §343(q))は成分表示義務からレストランを免除しており、従ってマ○ド○ルドもかかる義務から免除されるべきだと凾ヘ抗弁している。しかし、連邦法が州法よりも優越してプリエンプトする場合にはその旨が条文上明記されるべきであるけれども本法ではそのような明記が欠けており、かつ、同法を執行する際のFDA(連邦食品薬品局)での論議でも州が消費者を保護する独自規制を許す旨の意思を表しているので、プリエンプションの剄R弁は認められない。

<ニューヨーク州消費者保護法349条及び350条上の要件>  πは具体性をもって(with specifity)凾フ欺瞞的行為・慣行を主張しなければならない。例えば、「Blue Cross and Blue Shield of New Jersey, Inc. v. Philip Morris, Inc.」178 F.Supp.2d 198, 269-70 (E.D.N.Y. 2001)事件に於けるπは、以下のような具体性をもって凾フ欺瞞的行為・慣行を主張していた。

<請求原因I>  欺瞞的行為の例を訴状では一つも示していないので、訴えを棄却すべきである。訴状以外のπの反論書に於いては、かろうじて「McChiken Everyday!」等という広告宣伝キャンペーンと「McDonalds can be part of any balanced diet and lifestyle.」というウエブ上の声明をπは挙げている。しかし、凾ヘ、毎日食べることがバランスの良い摂取である、とは言っていない。健康への特定した影響を主張することなく、単に毎日食べるように奨励するのは、pufferyに過ぎない。pufferyとは、消費者が依拠できるような具体性を持たない一般的な声明の意である。従って反論書の指摘をもし訴状に記載していたとしても棄却を免れない。   その昔の1980年代にニューヨーク州の司法長官がマ○ド○ルド社に対して採った次のようなアクションは、当事件では既に3年の消滅時効にかかっているとはいえ、πが訴えを[修正訴状に於いて]形成する上で参考になろう。すなわち当時の州司法長官は次のような宣伝が欺瞞的であると特定して手紙を発出している。

1.塩分がメニューの全てに渡って減少した、と広告宣伝しているけれども、実際にはレギュラー[フレンチ]フライ、レギュラー・チーズバーガー、6ピース・ナゲット、及びバニラ・シェイクに於いて塩分が減少していなかった点
2.シェークは本物のミルクであるという広告宣伝に於いて、シェークには完全なミルクと、天然の甘み成分と、1液量オンスの香料と、味を保つための安定剤が入っていて、それだけである(And that's all.)という声明にもかかわらず、実際にはその他にも人工・化合物が複数入っているという事実に反していた点

πは、マ○ド○ルド社が成分を開示していないという主張もしているけれども、まずは開示の義務があることを訴状で明らかにしなければならない。企業に開示義務があるのは企業のみが消費者に関連性を有する重要な情報を有していてそれを提供しなかった場合である。本件ではマ○ド○ルド社がそのような情報を有していることや消費者がそれを入手できないこと等をπは示さなければならない。

<請求原因II>  子供を標的にするマ○ド○ルド社の表明を問題にしているけれども、具体性をもった主張に欠けるので棄却せざるを得ない。πは反論書の中で、(1)「Slugger」と呼ばれる牛肉食品を一日二回供することで「更に高く登りもっと遠くに自転車で行くような事柄を容易にする」という広告宣伝と、(2)「Mighty Kids Meal」という販売促進が多くの料理を食べることと更なる成長を同一化している点とを、具体的に指摘している。前者(1)は具体性を十分有する指摘なので、もし訴状に記載されれば請求棄却の申し立てを生き残ることが可能であろう。もっともπは更に(1)のような販売促進が欺瞞であることと、そのような具体的な販売促進に因って損害を被ったことも訴状に理由として記載しなければならない。後者(2)は短にpufferyであろう。

πは更に、反論書に於いて初めて、マ○ド○ルド社が滋養情報を提供すると約束している点を問題にしている。しかし実際にそのような約束をした例を具体性を持って記載していないのでこの点も請求棄却を免れない。更にπはマ○ド○ルド社がオンライン上で滋養情報を利用可能にしていることを認めている。全ての製品に関して全ての購入店に於いても滋養情報を提供する旨の具体的な約束をしていたという指摘を欠く限り、πは有効な訴えを記載したことにはならない。

<請求原因III: 生来的に危険な食品>   高レベルなコレステロール、脂肪分、塩分、及び糖分を含むからマ○ド○ルド製品は生来的に危険であるとπは主張している。『不法行為第二次リステイトメント』402A条のコメントiは、消費過多な場合に危険な製品は理不尽なまでに危険な欠陥製品とは言えないと指摘している。通常の常識的知識を有した通常の消費者にとって危険なものでなければ欠陥ではなく、砂糖や、良いウイスキーや、良いタバコや、良いバター等は、消費過多になれば危険かもしれないけれども、そうでなければ欠陥ではないと述べている。もっとも同リステイトメントが起草された60年代にはタバコ訴訟が予想されておらず、その後、タバコは、業界全体に渡って中毒性に関する研究の成果を抑圧したことやニコチン量を管理して中毒性を操作した点等が糾弾され責任を負わされたことから、時代遅れな点がある。すなわちタバコ訴訟の成功が示すように、例えばタバコ会社が中毒性を生じさせるために故意にタバコ内のニコチン含有量を変化させたような場合には、たとえタバコの消費過剰の健康被害が広く知られていたことだけでは必ずしも責任を免れることにはならないということは、当判決意見に於いて指摘しておく価値がある。しかし、πの訴えが棄却を生き残るためには少なくともマ○ド○ルド製品が合理的な消費者の期待を外れる程に異常に不健康であることか、又は、その意図された使用に於いて異常なまでに不健康であることを、指摘しなければならない単に高レベルなコレステロール、脂肪分、塩分、及び糖分を含んでいるという指摘ではこの基準を超えていない。ファーストフードは一般的に、そしてマ○ド○ルド製品に於いても同様に、高レベルなコレステロール、脂肪分、塩分、及び糖分を含んでいることは良く知られているし、そのような特性は[健康に]よろしくないことも良く知られているからである。

この点に関する規範は、当裁判所意見の冒頭で議論した政策的争点に照らすと意義を有するものである。スーパーサイズのマ○ド○ルドを膨大な回数に渡り食べることが、高コレステロール、高脂肪、高塩分及び高糖分ゆえに非健康的で体重増加(と付帯する諸問題)につながることを、もし人が知り又は知るべきであった場合、法はその人を自らの過剰さから保護する立場には居ないのだ。誰もマ○ド○ルドを食べるように強要されては居ない。(....) 更にもっと重要なことは、誰も自らの食事をスーパーサイズにするように強要されていないし、より不健康なメニューを選択するように強要されても居ないのである。
消費者が適切な知識を有しつつ自由な選択権を行使する限りにいて、過失責任は製造業者に課されない。例えばマ○ド○ルドを一定頻度で食べることがirrefragablyな危害の原因になり得る場合のように、選択をするために必要な情報を隠されて、選択権が奇怪な妄想に過ぎなくなったときにのみ、製造業者は責任を課されるのである。πは訴状に於いて、マ○ド○ルドに於いて週に数回食べるという自らの決定が自由な選択としてなされたものではない...という主張をしていない。

Id . at 533(以上、評者による直訳)(強調は付加).

訴状に記載は無いけれども反論書に於いて初めて出てきたπ側のいくつかの主張について、以下でも一応触れておく。

<通常のハンバーガーやフレンチ・フライよりも危険であるという反論書について

反論書によれば、マ○ド○ルドによる食品の調理方法は、普通のレストランや家庭で調理するハンバーガーやチキンやフレンチ・フライという言葉から連想する食事とは全く異なり、大分加工が施されている。この主張は遺伝子組み換え作物に対するものに似ている。遺伝子組み換え作物の人体への悪影響は未だ説明され得ていないけれども、アレルギー体質等の原因だとの主張がある。本件とは無関係であるけれども、マ○ド○ルドがその食品を遺伝子操作作物で汚染させていると抗議されてフランスに於いて店の前に腐った野菜などを撒かれる事件が報じられ、イギリスでは抗議に応じて遺伝子組み換え食品をメニューから除去し、アメリカでは遺伝子組み換えジャガイモから作った冷凍フレンチ・フライを農家から購入しないと供給業者に通知したと報じられている。出典は、Jeffery K. Francer, Frankenstein Foods or Flabor Savers?: Regulating Agricu;tural Biotechnplogy in the United States and European Union, 7 VA. J. SOC. POL'Y & L. 257, 258, 262 (2000); 及び、 シュロッサー前掲書269頁.

更にπは、マ○ド○ルドが食品を余りにも加工し過ぎて、通常の合理的な人が知る範囲を超えて不健康な性格を帯びているとも主張し、例えば普通のハンバーガーやフレンチ・フライから抱くイメージとは異なると指摘する。チキン・マ○クナゲットは例えば、ハンバーガーよりも健康な選択肢の印象を普通は与えるけれども実際はハンバーガーに比べて1オンスあたりの脂肪含有量が二倍にも達する

以上の主張は[もし訴状に記載されれば]、請求棄却のハードルをかろうじて超えることが可能であると思われるものである。なぜなら一般的には知られていない危険性があることを指摘し、それをマ○ド○ルドが消費者に開示する義務を主張しているからである。更にこの主張は、マ○ド○ルド側が反論するところの、もしπの訴えが認容されれば他の地元のピザ屋やベーカリーや食堂に対する濫訴・訴訟の洪水を触発するという点も打ち負かしている。なぜならば地元のピザ屋やベーカリーや食堂はマ○ド○ルドのような[過剰な]加工を全世界に統一して施してはいないからである。

アレルギー体質であるという反論書の主張について

反論書等でπはアレルギー体質だったからマ○ド○ルドに警告義務があったと主張する。しかし、判例法によれば、アレルギー物質が含まれていること及びそれにより生じる危険が広く知られている場合には、指示警告の義務は無い。本件では、πが、マ○ド○ルド食品中の何がアレルギー物質であるかを記載せず、更に、かかるアレルギー物質の含有が広く知られていないとの指摘も欠くので、ここでの主張も棄却を免れない。

予見可能な誤使用

πは更に過度に繰り返しマ○ド○ルドで食べることは予見可能や製品の誤使用(misuse)に当たると主張している。しかし。食品の過度な摂取が誤使用に該当するという判例を何も示していない。過剰摂取に関する主張をするならば、マ○ド○ルド食品がその目的にそった使用(intended use)をしても危険であったというものであろう。すなわち、仮に、マ○ド○ルド食品の目的にそった使用によればどれを毎日食べても良いというものだったとπが主張し、かつ、マ○ド○ルドはどの食事でも毎日摂取することが理不尽に危険なことを知り、あるいは知っているべきだったとπが主張していたならば、請求棄却を逃れる請求になろう

<相当因果関係>

πが相当因果関係を立証するためには、凾フ行為が害を生じさせた上での実質的な原因(a substantial cause)であったことを示さなければならない。「実質的な」という語彙には、理に適った人がそれを原因であるととらえるような意味を包含し、かつ、責任の概念が伴う。

しかし本件でπの訴状は、πがマ○ド○ルドを何回食べたかを具体的に示しておらず、従ってたとえ一回でも食べた者でさえもクラス・アクションのクラスを構成し得るようにも読めてしまうし、他の要因がπの肥満の原因だったとも考えられ得てしまう。訴状には少なくとも、π自身の健康問題を生じる上で実質的な原因になったか否かを事実認定上の問題として審理するに足るだけの十分な頻度でマ○ド○ルドを食べたことを示さなければならない

更に訴状には、他の原因の可能性にも触れなければならず、できればそのような他原因を否定するか、又は、他原因にもかかわらずマ○ド○ルドでの摂取(McDiet)こそが実質的な原因であったことを示さなければならない。πの肥満症などの疾病が、単に遺伝、環境、又はその他の原因に因るものでは無いことを主張する必要があるのである。

<請求原因IV: 不健康な成分の警告懈怠>

ニューヨーク州判例法によれば、製造者が警告義務を負うのは、予見可能な使用から生じる隠れた危険性や、合理的に予見可能な意図に反する使用の危険性(danger of unintended uses ..., provided these uses are reasonably foreseeable)についてである。

警告懈怠の事件に於いてニューヨーク州が相当因果関係の不存在を認定する場合が2つあり、(1)は明白な場合(open and obvious)で、(2)は知識を有するユーザーの場合(knowledgeable user)である。(1)の明白さの抗弁は客観基準を採り、例えばアルコール飲料の危険性をたとえ未成年者が主観的に知らずとも抗弁たり得ない。(2)の知識を有するユーザーの抗弁は、主観的な基準であり、πが製品の危険性を実際に知っていた場合に相当因果関係が否認される。マ○ド○ルドは(1)を抗弁として主張している。

明白さの抗弁は、危険性が隠されていた場合やユーザーには理に適って明白だとは言えない場合には、適用にならない

しかし前述したように、訴状には、マ○ド○ルド製品が理に適った消費者にとって明白では無い危険性についての記載を欠く。

更に前述したように因果関係に関する記述も欠くので、請求原因IVも棄却する。

<請求原因V:中毒性のある製品の販売>

πは、中毒性があるから生来的に危険であると主張しているようであり、更に、中毒性を警告することを懈怠したと主張しているようでもある。

しかしながら、中毒性の主張は具体性を欠き、例えば内容成分の内の脂肪と砂糖の組み合わせが中毒性を生むのか、他の配合が生むのか等が不明である。更に、中毒に陥るためには一度だけマ○ド○ルドを摂取して成るのか恒常的摂取に因るのかも不明である。加えて、πのような未成年者の方が大人よりも中毒に成り易いのかも判らない。

訴状には具体的な記載が不可欠であり、少なくとも、(1)中毒に成ったことをうかがえる程度の症状を伴って中毒になったという主張と、(2)当該製品に対してπが中毒であると信じる根拠を具体化させなければならない

そのような具体性を欠き、更に因果関係の主張も欠いているので、請求原因Vも棄却する。

 おわりに

請求は棄却しているけれども、訴状修正の機会を与えつつ、修正訴状を起案する際のヒントまで与え、かつ、タバコ訴訟の先例を引きながら明白な危険についも仮に刳驪ニ側に欺瞞や操作などがあった場合には有責になり得ることを示唆する等、本件π及び将来のπに対しての配慮も入れた理由になっているのではないでしょうか。

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