法と経済学」補講(2017年度・Year 13) 

***第一回: 4月15日***

"Law + Economics"

中央大学総合政策学部教授、同大学院 総合政策研究科 委員長
博士(中央大学・総合政策)、
米国弁護士(NY州)
平野 晋

〈法と経済学〉は「パイ」(pie)をメタファーとして使う; 「パイ」って何?

"Never in the field of human conflicts was so much owed by so many to so few.".

人間の争いの中で、かくも少なき人々に、かくも多くの人々が恩恵を受けた例(ためし)は無い。

バトル・オブ・ブリテン」(*)に勝利したチャーチル首相の名演説

(*) 「The Battle of Britain」: 第二次大戦中の対独防空戦。1940年5月〜10月。

法律学も経済学も「偽善」である。
両者共に、「人の為に善い」規範や活動を求める。
そして「偽善」とは、「人の為に善い」と綴るのである…?!

平野 晋

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"An economist is an expert who will know tomorrow why the things he predicted yesterday did not happen today."

経済学者とは、昨日予見したことが何故今日起きなかったかを明日知る専門家である。

Jacob Jacoby, Is It Rational to Assume Consumer Rationality? Some Consumer Psychological Perspectives on Rational Choice Theory, 6 ROGER WILLIAMS U. L. REV. 81, 151 n.192 (2000). *****************************************************************************************************************************

関連ページは、「現代不法行為法理論」の中の「経済学的抑止論」(Economic Deterrence Theory

Susumu Hirano, Professor of Law, Faculty of Policy Studies, Chuo University (Tokyo, JAPAN); Member of the New York State Bar (The United States of America). Copyright (c) 2015 by Susumu Hirano.   All rights reserved. 但し作成者(平野晋)の氏名&出典を明示して使用することは許諾します。 もっとも何時にても作成者の裁量によって許諾を撤回することができます。 当サイトは「法と経済学」の研究および教育用サイトです。

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【未校閲版】without proofreading

目次

講義補講(予定なので実際の授業進行次第で変更します)

第一回 2017年4月14日  「序論(イントロダクション」 / 「法と経済学」とは何か? 学際的 総合政策的 法律学 ミクロ経済学 ハイポ . . .
第二回 2017年4月21日
  「序論」の続きと「総論」 (第一回を受講しなかった学生の為に前回の復習的な講義)  
第三回 2017年4月28日  「序論」「総論」の続きと、経済学のイントロダクション
第四回 2017年5月5日   休講
第五回 2017年5月12日
 合理的選択理論、需要(消費・効用極大化)と供給(生産・利潤極大化)と、均衡と賃料規制と独占
第六回 2017年5月19日   総論の続き(パレート最適、カルドア・ヒックス効率、効率性対衡平性、等)
第七回 2017年5月26日  「市場の失敗」(外部化)と「迷惑メール」と「共有地の悲劇」
第八回 2017年6月2日 「市場の失敗」の続き―「公共財」「協力ゲーム」「囚人のジレンマ」「交渉[取引]理論」
第九回 2017年6月9日   財産権と「反共有地の悲劇」と、会社法の法と経済学
第十回 2017年6月16日  会社法(自己資本比率と危険愛好)の続きと、「コースの定理」
第十一回 2017年6月23日   「コースの定理」の続き 
第十二回 2017年6月30日  休講
第十三回 2017年7月7日 
 「コースの定理」の続きと 「"不法行為"法と経済学」
第十四回 2017年7月14日  
総括
第十五回 2017年7月21日 最終試験

第十二回 2016年7月1日   「"不法行為"法と経済学」そのA
第十三回 2016年7月8日 「"不法行為"法と経済学」そのBと、「法と行動経済学(認知心理学)」と、契約法と、総括  
第十四回 2016年7月15日 総括

2017年7月21日 (最終試験 試験時間は60分。
参照物等の「持ち込み不可」なので、しっかり勉強しておいて下さい。試験開始30分経過後は、理由の如何を問わず(交通機関の遅延でも、地球が破滅しても)一切入試出来ませんので注意下さい。
 法と経済学上重要な文言の漢字や英単語(含、一部ラテン語)も暗記しておいて下さい。

主要参考・引用文献

関連情報

ジョン・ロールズによる批判 〜公正としての正義、分配に於ける正義、他〜

「規範的法哲学者」(normative legal philosophers)とは…

ドゥオーキンによる批判

「法と経済学」と「シカゴ学派」の歴史

アメリカ法学に於ける学際研究の歴史と、法と経済学とカラブレイジ

「パレート最適」よりも「カルドア・ヒックス効率」の方が「法」の経済的分析に適する理由

【未校閲版】without proof

2017年4月14日講義

序論 Introduction

法と経済学(総論) Law & Economics

<法律を学際的総合/政策的に分析する基本としての「法と経済学」

See総合政策とは何か?

「学際的」とは…↓

- 法律学が独立してその中だけで完結できるという古来の因習的法律学への懐疑・批判。
- ミクロ経済学「的」(含、厚生経済学「的」)な思考を応用した法律学。
  i.e., 稀少(scarce, scarcity)資源を、如何に配分すべきか?

 道具instrumentality理論的な視点を入れる。つまり、法は目的達成の道具。

   近年では、「倫理哲学」や「認知心理学・行動科学」等からも学際的に分析。

テキストでは、更に「行動科学」「認知心理学」「行動経済学」「倫理哲学」「法と文学」「法と大衆文化」等々からも分析。 --- 学際法学Law ands(ロー・アンズ)

  

 最高裁判所裁判官国民審査法第32条(「罷免を可とする投票の数が罷免を可としない投票の数より多い裁判官は、罷免を可とされたものとする。」)

 憲法第79条2項以下

 投票用紙の画像

 臓器移植のオプト・インとオプト・アウトの違いと採用国について: 佐藤英明「臓器移植における互恵性」5頁

 迷惑メールのオ「オプト_イン」「オプト_アウト」の説明 by 総務省



(講義は以上迄にて終了; 続きは次回に。)

「法と経済学」は「規範」を論じ、規範の正当性を得る為には、効率性だけからではなく倫理哲学等からの支持も必要という点もテキストは強調。
アメリカで「法と経済学」が誕生し発展した理由の一つは、学部レベルで法学が教育されないから。⇒ 法律「以外」の学識の上に初めて法学が教えられる。

「総合/政策的」とは…↓

- 諸学問分野からの分析結果を「総合」して、「目的達成のために採るべき手段を判断」。
  i.e., どちらを勝訴させた方が社会にとってより望ましいか?

  ∴「巨視的」(macroscopic)である。 ← 因習的な法律学は「近視眼的」(myopic)であった。

  同時に、経済効率性以外の諸価値、諸考慮も。

  テキストは、不法行為法(含、製造物責任法)に於ける総合的・学際的な判断の必要性を示している。

特に、「財産[]法」(含、知的財産権)(*1)、「契約法」(*2)、および「不法行為法」(*2)に於ける分析
(*1)(*2)(*3): そもそも法律学の分類は、「公法」と「私法」、当学部では「民事法」「刑事法」「公法」の三分類。加えて主要な分類は「実体法」と「手続法」、「一般法」と「特別法」、「大陸法」と「英米法」。 ちなみに中央大学の伝統は英米法。「中央大学の建学の精神」=「實地應用ノ素ヲ養フ」(*4) .... ⇒ 「行動する知性」 "Knowledge into Action!"
 英吉利法律学校1885年創設
(*4) 
創立者たちがこの学校を設立した目的は、イギリス法(英米法)の長所である法の実地応用に優れた人材を育成するために、イギリス法の全科を教授[することにありました。]  / 創立者たちの「建学の精神」は、抽象的体系性よりも具体的実証性を重視し(*5)、実地応用に優れたイギリス法についての理解と法知識の普及こそが、わが国の独立と近代化に不可欠であるというものでした。 (「中央大学の建学の精神」より)(強調&注付加)
(*5) 抽象的な大陸法よりも、具体的実証性を重視する英米法とは、以下参照
「法と経済学」は、「経済学」ではない――独立した学問領域であり、かつ、どちらかと云うと「法律学」に於いて発展。Seeアメリカ不法行為法 at note 2 at 215 and accompanying text. → 学際的、「ロー・アンズ」(law ands)、法哲学法社会学、等々。
ミクロ経済学厚生経済学的思考を用いる。
ミクロ経済学=家計の消費と企業の生産という個別経済から全体を議論し、市場を研究対象にする。 / 厚生経済学=効率、所得分配、厚生(welfare)の極大化を研究対象とする。 −−− 前者は「資源の効率的な配分(allocation)」を重視。後者は「富の公正な分配(distribution)」にも思いを馳せる…。
稀少(scarcity)資源を、多様な重要性を有する欲求の間で、如何に配分すべきか?
稀少資源 効率的利用促進。
巨視的macroscopicな(i.e., 社会的な目標から望ましい法を探る)点に於いて、これまでの法律学の以下の特徴に対峙: @当事者間の利益衡量を量る、A条文・文言解釈。
一つのアプローチであって、全てではない。  [平野: 法にとっては、たとえば「倫理哲学」(Moral Foundations)的な視点も重要]
[平野: 「行動経済学」(behavioral economics)や「認知心理学」(cognitive psychology)等からの、新しい批判も重要。] 筆者の以下のウエブページも参照 → 「法と認知心理学=@/ 法と行動経済学

 小林&神田infra, at ___(最初と最終章);  クーター&ユーレン, infra, at 11-17.

hypo..を利用[1]

ハイポ」(hypothesis, hypothetical)とは…。「事例研究」!!

E.g.,   鉄道と沿線農家   Seeアメリカ不法行為法 at 249.


[1] なお「経済学」は、突飛?!な仮定を前提に議論する(から役立たない?!)と揶揄されることもある。たとえば、economist jokeとして、「離れ小島に漂流した、物理学者と、化学者と、経済学者が、缶切り無しで缶詰を空ける方法を議論した。…。」というジョークは有名。POLINSKY, AN INTRODUCTION, supra, at 1.

工場と周辺住民   アメリカ不法行為法 at 247.

自動車と歩行者etc.  Id. at 248.

  迷い牛と隣接農地の被害 (有名な「コースの定理」) Id. at 239-40.

どっちが勝訴すべきか? --- 因習的な法律学(*)では…。v. 法と経済学では…。

(*)これまでの法律学の以下の特徴に「法と経済学」が対峙: @当事者間の利益衡量を量る、A条文・文言解釈。 小林&神田infra, at 190.

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ジョン・ロールズによる批判 〜「公正としての正義」、「分配に於ける正義」、他〜

See平野晋『アメリカ不法行為法---主要概念と学際法理342-44頁(中央大学出版部、2006年)の第二部、第II章.

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規範的法哲学者」(normative legal philosophers)とは…

「法と経済学」および「批判的法学研究」(CLS: critical legal studies)との比較に於いて、第三番目の法の原理的な学派としてのジョン・ロールズのことを、倫理哲学的に不法行為法を分析する指導的学者のGeorge P. Fletcherは以下の論考に於いて次の様に指摘しています。

出典: George P. Fletcher, Why Kant, 87 COLUM. L. REV. 421 (1987).
Fletcher, Why Kant, supra, at 428-29.

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ドゥオーキンによる批判

有名な批判は、ドゥオーキンの以下の論文です。

Ronald M. Dworkin, Is Wealth a Value?, 9 J. LEGAL STUD. 191 (1980).

「法と経済学」は、社会に於ける富の極大化を善として、それ自体が目的化しているようです。

しかし、富の極大化自体が何故、善なのでしょうか?

法が本来目指すべきは、「福祉の極大化」(welfare)であるべきです。

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「法と経済学」と「シカゴ学派」の歴史

「法と経済学」という比較的新しい学際的学問分野の出現に於いては、いわゆる「シカゴ学派」(Chicago School)がその勃興に貢献したという指摘を、しばしば目にします。

それでは一体、その法と経済学のシカゴ学派というものはどのように出現したのでしょうか?その歴史を簡潔に示すものとして、以下の論考の中から紹介しておきましょう。

出典: Minda, James Boyd White's Improvisations of Law As Literature, infra, at 157, 168-170.

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アメリカ法学に於ける学際研究の歴史と、「法と経済学」とカラブレイジ(Calabreisi)

アメリカでは古くから学際的に法律学を研究していた点を、倫理哲学的に不法行為法を分析する指導的学者のGeorge P. Fletcherが、以下の論考に於いて次の様に指摘しています。

出典: George P. Fletcher, Why Kant, 87 COLUM. L. REV. 421 (1987).
(n.17)Calabresi, Some Thoughts on Risk Distribution and the Law of Torts, 70 YALE L. J. 499 (1961).
(n.18) K. LLEWELLYN & E.A. HOEBEL, THE CHEYENNE WAY (1941).

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「パレート最適」よりも「カルドア・ヒックス効率」の方が「法」の経済分析に適する理由

この点についても、前掲George P. Fletcherが、以下の論考に於いて次の様に指摘しています。

出典: George P. Fletcher, Why Kant, 87 COLUM. L. REV. 421 (1987).

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主要参考・引用文献

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"[E]very lawyer ought to seek an understanding of economics" because [w]e learn that for everything we have to give up something else, and we are taught to set the advantage we gain against the other advantage we lose, and to know what we are doing when we elect.
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Oliver W. Holmes, The Path of the Law, 10 HARV. L. REV. 457, 474 (1897) cited in
Stephen G. Gilles,
The Invisible Hand Formula, 80 VA. L. REV. 1015, 1042 (1994).

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