企業法務の研究

Studies of Laws for Enterprises / Studies for Legal Departments

中央大学 教授 (総合政策学部)
米国弁護士 (NY州)
平野 晋

Susumu Hirano, Professor of Law, Faculty of Policy Studies, Chuo University (Tokyo, JAPAN); Member of the New York State Bar (The United States of America) .  Copyright (c) 2004-2007 by Susumu Hirano.   All rights reserved. 但し作成者の氏名&出典を明示して使用することは許諾します。 もっとも何時にても作成者の裁量によって許諾を撤回することができます。当ページ/サイトの利用条件はココをクリック Terms and Conditions for the use of this Page or Site. 当サイトは企業法の研究および教育用サイトです。

【未校閲版】without proof

目次

企業法務とは

企業法務=「法匪」論

「営業」対「法務」に関する一考察 〜指示警告表示の分析から〜 

企業性悪説

日本にも在る企業性悪説的偏見と濡れ衣

アメリカの訴訟で被告になった日本企業のディスカバリー(開示手続)対応あれこれ

エンロン事件
電子メールに対するディスカバリー(開示手続)
 ディスカバリー制度はアメリカの平等主義的価値観に合致する!

企業法務とは

筆者の企業法に関する研究業績に関しては、以下を参照下さい。

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企業法務=「法匪」論

「法匪(ほうひ)」とは、法律を使う人に対する侮蔑語です。発音が「放庇」(屁をひること)と同じことからも侮蔑的な響きが一層助長される言葉です。なお、「匪」とは、集団で略奪、殺人、強盗等を行う賊を意味する「匪賊」という言葉で使われます。

企業という営利団体に於いて法務部門は、しばしば、営利活動を阻害する(足を引っ張る)存在として、組織内に於いて非難の対象となり、「法匪」の汚名を浴びせられることもしばしば。

しかし、法務部門の言うことを聞かないで営利団体が突っ走ると、皆さんもご承知の○菱自動車とか、雪○食品とか、西○鉄道のような不祥事を、惹き起こす訳です。

もっとも法務部門としても、ただNo.と言ってばかりいては、営業部門の信頼を勝ち得ることが出来ないので、難しい問題に対してはその目的を達成できるような代替案を提示してあげる能力が求められます。 この能力はアメリカの一流法律事務所の弁護士の多くに備わっていると同時に求められる能力です。 日本の弁護士はこれまで、残念ながら、ただNo.と偉そうに言うだけで、企業依頼人の期待に応えられない例が多かったことは、残念なことです。 しかし最近では日本でも、一流事務所の若手パートナーの中に、アメリカ並みの優秀な者も見受けられるようになって来たことはうれしいことです。

組織の中でprofit centerを敵に回して「No」と言うのには勇気が要ります。身分保障などの制度的な後ろ盾も、本当は必要でしょう。それは今後の課題ですが、いずれにせよ、Noという勇気が、法務部門スタッフには求められて居るのです。

従って有能な法務スタッフに成るためには、何時辞めても良い覚悟とその能力が必要でしょう。すなわち、他社でも食べて行ける能力、転職能力、俗な言い方をすれば「包丁一本」あればどこでも食べて行けるだけの能力が、求められているのではないでしょうか?

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「営業」対「法務」に関する一考察 〜指示警告表示の分析から〜

仮想事例(hypo.):   例えば、製品に関してのリスク情報をどこまで表示すべきかという論点に関して、営業部門と法務部門が意見を対立させた場合を仮定してみて下さい。どの企業でも生じ得る事例です。

営業部門としては、都合の悪い情報は売り上げを引っ張る効果を有するのでなるべく表示したくないと、主張します。これに対し法務部門は、表示すべきと主張する訳です。

この場合、どちらに軍配を上げるべきかを、非常に冷徹に、功利主義的な「法と経済学」的に考えてみると、以下のような分析も可能です。(ちなみに筆者はこの分析が正しいと断定している訳ではありません。悪魔でも仮想事例として頭の体操をしているので...。)

営業の主張が勝てば、売り上げが伸びます。しかし訴訟や、訴訟外のクレーム対応費用、更には評判の低下(reputation risk)による売り上げ鈍化、等々でコストも増えます。そこで、どこまで表示するのが、利益とコストの考量の結果として最適な点かを探ることが必要になります。(定量化は困難でしょう。)

しかし、社会全体の効用を考えたとき、一つの企業にとって最適な点を求めるだけでは善だとは本来は言えないはずです。もし、例えば取引費用等ゆえにコストの外部化が生じているような状態ならば、かかる行為は本来なら止めるべき等という考察も重要になって来ます。...

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企業性悪説

アメリカには、巨大企業というものに対して悪のレッテルを貼り偏見を抱く風潮が見られます。

これに関する筆者のエッセイ(上梓予定『アメリカの弁護士とユーモア』(仮題))の原稿から、以下、紹介してみましょう。

映画「インサイダー」より。
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夜中。タバコ会社の研究開発部門の長だったラッセル・クロウが、ホテルの一室の窓から、向かい側のオフィス・ビルの窓越しに中の様子を眺めている。彼は、正義のために、妻の反対も押し切って、タバコの害に関する会社の内部情報をマスコミの番組で収録させた。CBSテレビの人気ドキュメンタリー番組「シックスティ・ミニッツ(60分)」("60 miniutes")においてだ。しかしそこに至るまでは長い道のりだった。告発を思い留まらせるように迫る匿名電話。郵便受けには拳銃の弾丸が置かれていた。だから妻は、告発を思い留まるようにラッセル・クロウに哀願していたのだ。しかし彼は収録に応じた。そして彼は、妻から家を出て行くように言われてしまった。職業もかつての重役の高年棒とは比較にならないほど安い教師業に転職。すっかり憔悴してホテルの一室に居るのに更に悪いニュースが。せっかく全てを投げ打って収録したのに放送されないという。CBSに圧力が掛かったというのだ。ラッセル・クロウは窓からじっと、向かい側のビルの窓を見ている。そして言うのだった。あそこは法務部のある階だ。法務部の連中は、俺を懲らしめるために夜中も働いているんだぞ!と。
[ココに映画「インダーダー」の広報用写真が入る。]
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映画や小説の世界では、企業=悪者という設定が多く見受けられます。例えば、上の「インサイダー」。更には、映画「エリン・ブロコビッチ」(原文脚注121)やグリシャムの多くの作品、映画「訴訟」(原文脚注122)等々と、本当に枚挙に暇の無い程です。
原文脚注121   前掲脚注_____ [映画の出典](企業が環境汚染をしているという設定です)。
原文脚注122   前掲脚注_____ [映画の出典](企業が欠陥隠しをしているという設定です)。
実際にアメリカの大衆は、その多くが企業に対して良いイメージを抱いていないという統計結果もあります。すなわち、82%もの人が企業は欲深さに突き動かされていると回答するものや、企業が欲深であると思う人が三分の一に達するなどというものです。企業へのチェック機能が不十分だと思う人も多いと指摘されています。(原文脚注 122)
原文脚注 122   Victor Futter著「企業に対する公衆の認識に対する回答は、企業オンブズマンか?」『全米法曹協会ザ・ビジネス・ロイヤー』誌46巻29頁(1990年)(An Answer to the Public Perception of Corporations: A Corporate Ombudsperson? 46 BUSINESS LAWYER 29).
[評者編集注   強調は付加。]
大衆から見れば、大きな財力と影響力を有する企業は、利益優先の存在で個人や消費者や市民を犠牲にするというストーリーの方が分かり易く「受ける」のかもしれません。そんなステレオタイプが背景にあるためなのか、以下のようなジョークも非常に有名なものです[]。
[評者編集注   強調は付加。]
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[ココにロイヤー・ジョークが挿入される。(省略)]
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大衆の抱く企業への畏怖感と歴史・文化的背景
企業を悪と看做して畏怖するアメリカ大衆の風潮は、何も現代に始まった訳では無いようです。アメリカの法科大学院で「コーポレーション」と呼ばれる会社法の講座で使うテキストでも、アメリカでは昔から企業の巨大化と影響力の強大化をおそれたという話が紹介されています(原文脚注125)。いわく、株式会社というのは「法人」という人格が付与されているとはいえ、実際には魂が欠けている。貪欲に経済的利益を追求して悪影響を及ぼす。制限を加えるべきである、等々という訳です。伝統的に政府の巨大化を嫌った「ジェファソニアン」(原文脚注126)と呼ばれる人達が、そのような懸念を示したということです。そのような伝統的な文化が、企業を悪と看做すストーリーを支持しているのかもしれません
原文脚注 125   JESSE H. CHOPER, JOHN C. COFFEE, JR. & C. ROBERT MORRIS, JR., CASES AND MATERIALS ON CORPORATIONS (3d ed. 1989)(「フェデラリスト」派の人達に対抗して、産業化や企業への資本集中化などを「ジェファソニアン」が嫌ったという歴史を紹介しています。).  
原文脚注 126    独立宣言の起草で活躍した第三代大統領トーマス・ジェファーソン(Thomas Jefferson)にちなむ言葉。中央政府の強化を警戒し、自衛農民層を重視。逆に強い政府・企業の振興を主張した「フェデラリスト」と対立。なおジェファソンも法曹(ヴァージニア州)だった。
[評者編集注   強調は付加。]

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日本にも在る企業性悪説的偏見と濡れ衣

筆者が鰍mTTドコモに於いて法務室長をしていたときの話です。「迷惑メール」という予見できない現象が、突如、巷で発生しました。

ドコモは迷惑メールを好ましくないものと考えて、頭を悩まして毎週のように対策を沢山検討し、執行しました。

それにもかかわらず、「迷惑メールでドコモが儲けている」という在らぬ濡れ衣が、一部のいわるゆ文化人や一部マスコミによって誹謗中傷された事がありました。

これは、日本にも、企業性悪説的なデマゴーグと衆愚心理が存在する実例でしょう。

成功する企業に対する妬みや、偏見が、強く感じられる事例です。

少なくとも学生諸君には、短絡的感情や、大衆扇動的なデマゴーグや言説に惑わされること無く、(社会・文化)科学的考察を冷静にできるように努めて欲しいと願って止みません。

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アメリカの訴訟で被告になった日本企業のディスカバリー対応あれこれ

否応無しにアメリカの裁判所で訴えられて被告(凵jになる日本企業・日系企業にとって悩ましいのが、ディスカバリー(開示手続)対応。

アメリカの民事訴訟規則(特に全米的な指導的規範たる連邦裁判所のFED.R. OF CIV. PRO.)に規定されている、広範囲なディスカバリーの権利は日本企業には理解が難しく、民訴規則違反によるサンクション(罰)を課されることもしばしばあります。

訴える原告側が広範囲なディスカバリーの権利を濫用していると思われる場合もしばしばありますが、しかし裁判所は企業剔、に不利な裁定を下すことも多いようです。

そこで、この項では、企業法務に欠かせないディスカバリー対応に関して記載してみましょう。

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エンロン事件

近年、超有名なトピックは何と言ってもエンロン事件にまつわる会計事務所アーサー・アンダーセンの所内弁護士による、証拠隠滅指示疑惑です。

Oct. 12, 2001
"It might be useful to consider reminding the engagement team of our documentation and retention policy.  It will helpful to make sure that we have complied with the policy.  Let me know if you gave ant questions.  Nancy"

日本に於ける詳細なプレゼンテーションは、筆者が社団法人 国際商事法研究所のALCにて行った2004年4月27日の発表を参照下さい。

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電子メールに対するディスカバリー(開示手続)

1st Up-loaded on Feb. 14, 2005.

『エイ・ビーエイ・ジャーナル』誌の今月号によると、以下の連邦地裁NY南部地区決定が、企業のディスカバリー対応に於けるホットトピックだと報じられています。

Zubulake v. UBS Warburg

Wendy Davis, The Zubulake Road Show, ABA J., Vol. 91, Feb. 2005, at 22.

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 ディスカバリー制度はアメリカの「平等主義」的価値観に合致する!

以下のような説得力のある主張を発見したので、紹介しておきましょう。

OSCAR G. CHASE, LAW, CULTURE, AND RITUAL: DISPUTING SYSTEM IN CROSS-CULTURAL CONTEXT 60 (2005, New York University Press).

更にOcsarは以下のようにも続けています。

Id. at 61.

上の最後の段落の分析は確かに、何故あれ程に強大な権限がいち弁護士に与えられているのかと思われるアメリカの民事訴訟の現状を、説得力を伴って説明してくれているのではないでしょうか?

【未校閲版】without proof

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