ファースト・フード(外食)により肥満症を生じさせた損害に対する賠償責任の研究

Studies of Fast Food Liabilities 

中央大学 教授 (総合政策学部所属)
米国弁護士 (NY州法曹界所属)
平野 晋

関連ページは「製造物責任法の研究」「熱いコーヒーは欠陥であると主張する製造物責任の研究」「現代不法行為法理論」「自己責任」に関する考察参照。

First up-loaded on Nov. 29, 2004

Susumu Hirano
Professor of Law, Faculty of Policy Studies, Chuo University (Tokyo, JAPAN)
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【未校閲版】without proof

法律学の最先進国たる米国の不法行為法の最新事例と背景に関する知見から、ファースト・フードの肥満症に対する責任の有無を検討します。

目次

総論: ファースト・フードによる肥満症の問題とは?

代表判例

[リバテヴィー対コロンビア特別区警察消防委員会事件]
[シャーマ対マ○ド○ルド事件]
[コーヘン対マ○ド○ルド事件] 
[バーバー対マ○ド○ルド事件]
ペルマン対マ○ド○ルド・第一事件、Pelman I 
ペルマン対マ○ド○ルド・第二事件、Pelman II   
ペルマン対マ○ド○ルド・第三事件、Pelman III 
タバコ訴訟のデジャ・ヴ?!: 両者間の類似性
タバコ訴訟では何故πが勝てたのか? 
肥満訴訟裁判例から読み取れること
肥満訴訟上の救済に必要な要素
中毒性等のリスク隠蔽・操作責任の準則

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【問題争点】

マ○ド○ルド依存度の数値
マック○ゲットは、「マック・フランケンシュタイン」?!  

______________________________.

不健康な素材の問題 --- そのような素材の使用を止めれば味が落ちるか?
設計欠陥の可能性  Design Defects
量が多過ぎる問題  Supersizing!?
私見
警告義務の射程 警告欠陥  Failure to Warn/Instruct
ファースト・フードが不健康なことは常識? --- 明白な危険
因果関係
中毒性
操作 Manipulation

______________________________.

【過失あるマーケティング】 Negligent Marketing

子供を標的にするマーケティング
ファース・トフード業界のマーケティングによる子供の食慣習への悪影響
判断能力の劣る子供向けマーケティングを批判するアメリカ法律論文 
特にマイノリティーも標的あるいはヒガイシャになっているという指摘
過失あるマーケティング≠フ法理
子供を標的(ターゲット)にしたファースト・フード業界によるマーケティングとして問題視される例
犯罪に使用された銃の販売主企業が責任を課された裁判例からのアナロジー?! (グリシャム原作の映画「ニューオーリンズ・トライアル」)  

______________________________.

【広告&広告規制】

子供を標的(ターゲット)にした広告宣伝規制の動き
タバコ広告宣伝規制の先例からのアナロジー
広告宣伝規制の合憲(表現の自由の保障)基準

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【訴訟への賛否】

訴訟は社会改善のための良き手段である、という意見: 「司法積極主義」 Judicial Activism
三権分立に反しても構わないという意見
三権分立に反するという意見
製造物責任法を用いるのは不適切かもしれないという懸念
ファースト・フード企業に責任を課すことに批判的論文 

______________________________.

【有識者意見、各界の反応】

ファースト・フード問題を指摘する書物
関連映画
業界からの反論
訴訟を封じる立法 (チーズバーガー法)

______________________________.

【自己責任≠フ射程】

アメリカ市民の反応
「自己責任」対「パターナリズム」
「父性主義」(パターナリズム)への嫌悪と「行動主義」的分析と「自己責任」
「父性主義」対「自己責任」(Paternalism versus Personal Autonomy

ファースト・フードによる肥満症の問題とは?(総論)

以下、講談社より上梓予定の拙エッセイ『アメリカの弁護士とユーモア』(仮題)の原稿から、当ウエブページに関連する部分を紹介してみましょう。

太り過ぎの責任を外食産業に転嫁する?!

二人のティーン・エイジャー[とその親権者]がファースト・フードを食べ続けて肥満になったとして,ファーストフード・チェーン店に対する集団訴訟(クラス・アクション)を提起したという事件が,最近,報道されたました。原告(π)の主張は、NY州内の被告(凵jチェーン店にて購入したファーストフードを摂取したために肥満症、糖尿病、冠状動脈心臓病、高血圧症、コレステロール摂取過剰、その他の健康上の害を被ったというものでした。訴えの中では、例えば「McChiken Everyday!」というキャンペーンによって毎日ファーストフードを食べるように奨励したり、「McDonalds can be part of any balanced diet and lifestyle.」とウエブサイトで広告宣伝することが欺瞞的であるなどとも主張していました。
この事件の裁判例(原文注*1)を調べてみると,連邦地裁は当初、さすがにπを敗訴させています。敗訴の理由として,ファースト・フードに脂肪や塩分が高いことは自明であることや、毎日食べるよう奨励する等の宣伝広告文言も「puffery」(消費者の訴えとして依拠できない程度の誇張)として許容の範囲内であること等が挙げられています。更に,肥満の原因が明らかにファースト・フードに因るものだとはいえず(因果関係proximate causeの欠如),店に責を負わせられないことなども理由に挙がっています。

(原文注*1) Pelman v. McDonald’s Corp., 237 F.Supp.2d 512 [「ペルマン対マクドナルド社」『連邦判例集補追第二編237巻512頁』](訴状修正の機会を付与しつつ訴え棄却); および Pelman v. McDonald’s Corp., 2003 WL 22052778 (S.D.N.Y. Sept. 3, 2003)[同『ウエストロー判例データベース2003年22052778号事件』](修正訴状を棄却).

しかし肥満の責任を転嫁されるのではないかとの危惧を抱いた外食産業界は,この事件を「言い掛かり訴訟」(frivolous suits)だと主張し牽制しています。
これら,非常識な程だと言われがちな訴訟社会の元凶は,何も弁護士ばかりが責められるべきではありません。例えば,陪審員や陪審制度運用上の問題が原因となって,常識的にはおかしな評決を許してしまうという指摘もあります。成功報酬(contingent fee)制度が言い掛かり訴訟の提起を奨励していることを問題視する声もあります。更には,裁判所が「自己責任」を否定する判決を下す傾向にあるために何でも他人のせいにする風潮を煽っているという批判もあります。家族や地域社会との結び付きといった,伝統的コミュニティーの崩壊が原因であるという,説得力のある見解(原文注*2)もあります。

(原文注*2) Warren E. Burger, (Feature) Isn’t There a Better Way?, 68 A.B.A. Journal 274 (Mar, 1982) [「より良い方法があるのか?」『全米法曹協会ジャーナル』誌68巻274頁](アメリカ人が様々な個人的抑圧や悩みの救済を裁判所に求めるようになって来た。裁判所は,教会や家族や隣人の連帯感が欠落して生じた欠点を埋めるように期待されて来ている,と連邦最高裁判所裁判長のバーガー判事は分析しています)。

このように,本来は裁判にかかわる様々な制度が相俟って訴訟社会の弊害を作り出しているにもかかわらず,大衆にとって裁判は弁護士とあまりにも密接に結びついて映ります。従って弁護士をスケープ・ゴートにして,「弁護士が悪い」「弁護士が訴訟社会の元凶である」といったイメージとロイヤー・ジョークに繋ってしまうのかもしれません。実際アメリカでは,弁護士が,訴訟増加で混雑する程の裁判所,保険料金の高騰化,延いては世界経済に対してのアメリカの遅れさえをも含めた国家の多くの病理の原因のスケープゴートになっていると言われています(原文注*3)。

(原文注*3) Jerome J. Shectack, ___________  Arizona Attorneys, June 1993, at 19 [「アメリカの福祉に法律高度専門職が仕えている」『アリゾナ弁護士』誌1993年6月号19,19頁]。

外食産業のせいで肥満になったと訴えられる?!

太り過ぎの原因をファースト・フードに押し付ける訴訟は,さすがにひどいように報道されました。が,しかし,最近のアメリカでは,肥満の責任が本人の意思の弱さだという産業界の主張に対し,豊食を勧める産業界への非難が高まっています。(原文注*4)

(原文注*4) Michael F. Jacobson, Tipping the Scales: Recipe for Reducing American Obesity Lists Labels, Legislation, and Litigation, Legal Times, Mar. 1, 2004, at 34 [「天秤を傾ける:アメリカの肥満リストの表示,立法,および訴訟を削減するレシピ」「法律タイムズ」紙2004年3月1日号34頁]。

今回の訴訟は,右のような風潮の中で提訴されたもの。これまでもカロリー過多な食品を販売する企業に対する訴訟はありましたが,その訴訟の理由・根拠は主に,誤表示・不適切表示を問題にするものでした。例えば,カロリー表示が欠けている,などというものです。
しかし,肥満の責任を直接的に問う今回の訴えは,今後同種の訴訟の引き金になりかねないとして,他の外食産業の懸念を生じさせています。例えば,ダブル・ジャンボ・ベーコン・バーガーや巨大サイズのコーラ等々のカロリー過多な料理を客に出したことのみを理由とする,何十億ドルものクラス・アクション(集団訴訟)の引き金になりかねない、という懸念です。そこで外食産業界は、最近、健康的な食事、例えばサラダ等をメニューに加えて来ているということです。(...ということは、訴訟は消費者の健康向上に貢献する効果があるとも言えるのではないでしょうか...?【著者注】) 外食産業界側の反撃として,食事で肥満になった等の訴訟を禁じる制定法を州と連邦レベルで立法させる動きも見せています。更なる反撃例としては,あるファースト・フード店が1990年に,店の近くでパンフレットを配っていた活動家を訴えたり,同社の食事の味をゴムのようだと批判したイタリア料理批評家を昨年に訴えたりしているという例もあるようです。
さて,コーヒーを零(こぼ)したり,肥満になったりした責めは,従来ならば「自己責任」と考えられていました。滑って転んで(slip-and-fall)ゲガをしても,昔なら「自己責任」(personal responsibility)で片付けられていたでしょう。しかし,常にケガをした人が責めを負うべきかどうかは,事案毎に異なるはず。場合によっては,製品の危険性を知らしめる義務が売主側にあるかもしれず,肥満を助長する企業にも何か反省すべき点があるのかもしれません。滑って転ぶにしても,危険な敷地を放置していた側にも責めが全く無いとは限りません…という事で,アメリカでは自己責任の範囲を縮小する方向で法解釈や裁判が進行し,賛否両論の論議を呼んでいる訳です。次に紹介するタバコ訴訟や銃メーカーに対する責任追及も,同じトレンドの現われです。 
【著者注: この原稿を書いた後、訴訟が健康向上に貢献している旨の筆者の示唆を支持するような文献も以下のように複数発見されましたので、以下のように紹介しておきましょう。】
訴訟の脅威は、最近の企業の政策変化に少なくとも一部、貢献しているのかもしれません。たとえば、Rudey Tuesdayレストラン・チェーンは素材ラベルをメニューに掲載するようになりました[]。マクドナルドも、広く報道されているように新製品を投入し、たとえば低脂肪サラダとか、デリ・スタイルのフライにしないサンドイッチとか、白身の肉のチキンナゲットとか、更には新しく、...サラダをベースにした大人のハッピー・ミール%凾ワでも投入しているのですから。他のチェーン店も同じ例に倣っているのです。
ファースト・フード会社に対する健康関連のクレーム、たとえば製造物責任や、公衆ニューサンスや、欺瞞的マーケィングや、その他の諸クレームは、Pelman事件の裁判所が指摘するような酷い情報非対称性(sever ingormation asymmetry)を減少させる効果を有するのかもしれません。」
Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 102, 105.
提訴するだけでも改善効果があります。たとえば後掲の「Sharma v. McDonald's」訴訟が提起された直後の2001年8月に、マ○ド○ルドは材料情報をウエブサイトと店に備置したブローシャー上で開示し始めました。更に「Pelman」事件が提訴されたわずか数日後には、フレンチ・フライの脂肪分を減らすために新しいクッキング・オイルの使用を始めました。 もっともマ○ド○ルドは提訴が原因だとは認めていませんが…。 / 更にカナダでよりヘルシーなメニューである「Lighter Choices」を開始し、フランスではタバコのような健康上の警告的な雑誌広告も始めたのです。
See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 146-47.

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代表裁判例

ペルマン第一事件の裁判所意見の中で、いわゆる自己責任論者(法廷意見の中の脚注にて自身が認めている)のRobert Sweet判事は、以下のように述べています。

自身の面倒をみるという個人の自己責任と、他人が保護してあげる社会の責任との間に於いて、どこで線引きをすべきだろうか? ...。 大衆は、訴訟好きな子供とその親達に対し疑念を抱き侮蔑している。『ハッピー・ミール』を生涯食べ続けた[自らの]責任を取ろうとしないからである...。

出典: 237 F.Supp. 2d at 516, 518 (訳は評者).

更に同判事は次のようにも述べています。

「ハンバーガーやその他のファーストフードを摂取する危険性を消費者が知らない訳ではない場合には、そのような食品を消費したことに対して法的責任を課すべきではない...。 マ○ド○ルドを食べることにより健康上の問題の可能性があることを消費者が知っているならば、それにもかかわらずスーパーサイズなマ○ド○ルド製品の暴食によって欲求を満たす選択をした以上、その責をマ○ド○ルドに任ぜさせしめることはできないのだ。」

出典: 237 F.Supp. 2d at 517-18, 543 (訳は評者).

もっとも次のようにも指摘しています。

「反対に、マクドナルドだけが知っている危険については、消費者が自らを守ることは期待できない。つまり、[公判を]維持でき得るだけ可能性のある必要な要素は、消費者の常識の知見内にはない危険をマ○ド○ルドの製品が包含していたということに違いない。

出典: 237 F.Supp. 2d at 517-18 (訳は評者).

更に次のようにも述べています。

「スーパーサイズのマ○ド○ルドを膨大な回数に渡り食べることが、高コレステロール、高脂肪、高塩分及び高糖分ゆえに非健康的で体重増加(と付帯する諸問題)につながることを、もし人が知り又は知るべきであった場合、法はその人を自らの過剰さから保護する立場には居ないのだ。誰もマ○ド○ルドを食べるように強要されては居ない。(....) 更にもっと重要なことは、誰も自らの食事をスーパーサイズにするように強要されていないし、より不健康なメニューを選択するように強要されても居ないのである。」

出典: 237 F.Supp. 2d at 533 (訳は評者).

もっともペルマン第一事件に於いて、問題のあった広告宣伝として以下を挙げているのは興味深いところです。

出典: 237 F.Supp. 2d at 528-29.

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タバコ訴訟のデジャ・ヴdeja vu?! 両者間の類似性

肥満訴訟はタバコ訴訟に類似している、と多くのコメンテイターズが指摘しています。

See, e.g., Vroom, Fast Food or Fat Food, infra, at 59 (タバコ訴訟が食品訴訟に類推可能であると原告側弁護士は信じている、と指摘).

See also Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 114, 121.

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タバコ訴訟では何故πが勝てたのか?

タバコ訴訟に於いても当初はπが勝てませんでした。その主な理由は、以下です。

そのようなπが勝てるようになった主な理由には、以下を挙げることができるでしょう。

See Note,Targeting Unpopular Industries, infra, at 1338-47& nn. 77, 83.

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肥満訴訟裁判例から読み取れること

コーヘン事件」の示唆するルール 

ペルマン第一事件」の示唆するルール

法廷意見が引用・指摘するタバコ訴訟「Blue Cross and Blue Shield of New Jersey, Inc. v. Phillip Morris, Inc.」 178 F.Supp.2d 198, 269-70 (E.D.N.Y. 2001)の例から類推すると、凾フ欺瞞的慣行を具体性をもって指摘しなければ難しいと言われています。たとえばタバコ会社がタバコの中毒性を信じていないとか、ニコチン含有量を操作していない、等の嘘を吐いていたという具体的な欺瞞の指摘が必要かもしれません。
法廷意見に於いて、ファーストフードはそもそも高コレステロール等の非健康的な食品であることが良く知られていることから非難に値しないと指摘されていることから類推すると、そのような明白な危険性とは異なる"隠れた"危険性の存在が必要です。これは、法廷意見に於いて、剞サ品が加工され過ぎて同種のハンバーガーやフレンチ・フライ製品一般とは異なる消費者には知られていないリスクを包含しているというπ反論書内の指摘がもし訴状にも記載されれば棄却を逃れ得ると示唆することからもうかがえます。
なお、明白であるという点については、以下のような反論も考えられます。
すなわち、ファースト・フードを食べると病気になり得るということを全てのアメリカ人が知っているという証拠はありません。特にPelman事件のπのようなブロンクス地区の子供が、学校でもしばしば出て来る食事の危険性を合理的に知っているべきだとは言い切れないと反論し得るかも…、と。
更に、製造物責任の判例編纂物(第三次リステイトメント)によれば、危険性を知っていたことが必ずしも抗弁たり得ないと規定していることはπに有利に使い得るはずである、とも…。たとえばMasonは、以下のように指摘しています。
第二次リステイトメントの消費者期待基準の下でも有利な事件でればファースト・フードの責任を成立さ得る一方で、第三次リステイトメントの複数要素を勘案する危険効用基準はファースト・フードの原告にとって更に相当程度有利です。危険効用基準に於いては消費者期待を沢山の諸要素の内の単なる一つにウエート付けすることによって、第三次リステイトメントは消費者期待が…[原告を]ノックダウンさせる抗弁となることを廃したのです。
See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 83, 87, 97.
Masonは続けて、タバコ訴訟の先例を示して、消費者期待ではなく危険効用基準を用いてπ有利になったと以下のように指摘しています。
『タバコに因る危害の危険性は、理に適った代替設計を採用すれば減少または回避し得たはずである』と。
See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 97-98 (Rose v. American Tobacco Co., 2004 N.Y. Misc. LEXIS 499, at *6 (N.Y. Sup. Ct., Feb. 20, 2004)を引用しながら).
更に、第三次リステイトメントによれば、食品に異物("foreign" sunstance)が混入していた場合には欠陥認定がされ易いこと、すなわち、その種類の食事に含有されていることを消費者が合理的に期待するか否かが基準となることから、通常含まれないような含有物であることを証明できれば有利になり得るという指摘もあります。
See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 85-86.
もっとも法廷意見が示している重要な点の一つは、たとえ広く知られた危険性がある場合(これは従来の製造物責任法『不法行為法第二次リステイトメント』402A条コメントiに因れば責任を課せない類型であった)であっても、タバコ訴訟のように、タバコ会社側が中毒性のあるニコンチン含有量を操作したような場合には責任を課し得ると示唆しています。従って、仮にファーストフードに中毒性があって、かつ、それを刳驪ニが故意に隠して操作したような場合であれば、責任が課され得ることも考えられます。
なお、ファースト・フードには中毒性があるという証拠や、その中毒性を助長するように剴凾ェ成分を操作したという証拠も、肥満に関する心理学的かつ生産学的因果関係学/病理学の調査が進めば、利用できるようになるかもしれないという指摘があります。
See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 86.
法廷意見が強調するように、剞サ品こそが肥満の原因の大きな部分を占めるという立証が必要。他の食品摂取過剰や遺伝的(血統?)・環境的要因(運動不足)等の他原因が無かったことの立証も関係します。

ペルマン第二事件」の示唆するルール   

ペルマン第三事件」の示唆するルール

[→凾ヘπからの開示請求に応じて情報を出さねばならない。例えば中毒性の情報を知っていたかの有無、等。]
[しかし、開示手続の後に、要件を満たしていなければ(i.e., 事実認定者に事件を委ねるだけの争点をπが示せなければ)、事件は凾ゥらのサマリー・ジャッジメントの申立によってトライアルにまで進めずに請求棄却・剌汨iに至る虞が依然あります。]

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訴訟上の救済に必要な要素

上記代表判例やタバコ訴訟の先例等から推論すると、ファーストフード肥満症訴訟に於いてπが司法府に於いて救済を認容されるためには、以下の要素が必要だと思われます。

中毒性等のリスク隠蔽・操作責任の準則

タバコ訴訟に於ける先例や米国の分析から推察すると、企業が中毒性等の危険性を隠蔽・操作した場合には責任が肯定され得るという特徴を挙げることが可能です。(もちろんそれ以外にも、古典的な要素である相当因果関係の立証が不可欠なことは言うまでも無いことですし、それは目新しい要素でもありませんが。)

そこで、米国の最新不法行為・最新製造物責任法の動向から、一種の「中毒性等のリスク隠蔽・操作責任の準則」というものが導き出されるという考え方もあり得ます。 

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マ○ド○ルド依存度の数値

前掲公表裁判例(ペルマン第一事件)によれば、πは修正訴状に於いて以下のような数値を指摘しています。

出典: Pelman, 2003 WL 2252778, at *1.

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マック○ゲットは、「マック・フランケンシュタイン」?!

前掲公表裁判例(ペルマン第一事件)は、マック○ゲットのことを、「マック・フランケンシュタイン」("a McFrankenstein creation of various elements not utilized by the home cook.")と呼んでいます。

出典: 237 F.Supp. 2d at 535.

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不健康な素材の問題 --- そのような素材の使用を止めれば味が落ちるか?

素材が不健康であるという指摘・争点に関して、そのような素材こそが好い味の源泉なので止められないか否かという問題があります。

しかし、不健康な素材を使わなくても味を維持できるという指摘もあります。

See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 95.

更に、より安全な代替製品も可能である例として、以下のような指摘もあります。

わずか320カロシーしかないMcLean Deluxeというハンバーガーを1991年にマ○ド○ルドが導入したことがあります。…一つ確かなことは、レシピを設計し直して、より安全にすることは、可能だということです、と。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 137-38.

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設計欠陥の可能性

より安全な代替レシピ Reasonable Alternative Design

上で指摘されるように、もし、更に安全な素材で代替することが可能であれば、製造物責任法に基づく設計欠陥の主張が可能になり得ます。

設計欠陥の要件は、『リステイトメント(第三次)不法行為法:製造物責任』(1998年)の第二条RESTATEMENT (THIRD) OF TORTS: PROD. LIAB. §2によれば、代替設計案(RADReasonable Alternative Design)を証明することです。 この要件等に関する詳しい情報は、評者の以下のページを参照下さい。 「製造物責任法の研究

以下のコメント論文は、この主張(設計欠陥の主張)は、タバコ訴訟に於けるよりも強力であると分析しています。何故ならば、タバコには更に安全な代替設計案の証明が無理ですが、ファースト・フードであれば、たとえばフレンチ・フライのオイルを更にヘルシーなものにすべき等という主張ができ得るからだということです。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 149.

明白に理不尽なレシピ  Manifestly Unreasonable Design

リステイトメント(第三次)不法行為法:製造物責任』§2のコメントeと、コメントbは、余りにも被害の虞が高いにもかかわらず取るに足らない社会的効用しかない製品設計が、たとえRADを示されなくても、欠陥であると認定され得る可能性を示唆しています。

注: この点も詳しい情報は、評者の「製造物責任法の研究」のページを参照下さい。

従って、ファースト・フードに対してもこの理論("manifestly unreasonable design"と呼んでいます)を使えるかどうかを検討したものとして、以下のような指摘があります。(もっとも主張としては弱い、という結果を示していますが…。)

マ○ド○ルドは一日の摂取カロリーの約80%もを一食に含むBig Mac Mealをマーケティングしていて、これは明らかに理不尽である。 … もっとも食事というものにはそもそも空腹を満たすという効用があるので、この主張は敗れてしまうことが確実であろうが…。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 139-40.

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量が多過ぎる問題 Supersizing!

肥満の原因として、量が多過ぎる点を非難する指摘も散見されます。

たとえば、危険効用基準による責任を凾ェもし避けたいならば、今以上に、少量で砂糖や塩分を控えめにすれば良い、今のまま[多過ぎて不健康な素材を用いた]理不尽で危険な商品を販売し続けたいのならば、有責になるリスクを負うのだから、PL保険を購入してコストを分散することになるでしょう、という指摘です。

See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 99.

Masonは更に次のように続けています。

消費者は量の多さを要望しているのであるという消費者の要求を抗弁にしたり、脂肪分や塩分が味を構成しているのであるという抗弁には説得力が欠けます。何故ならば国家の健康上の問題に比べれば、切迫した主張にはならないからです。 更に、心理学的研究も、人はどのような大きさでも目の前に出された食品を食べようとする強い生物学的な性向を有しているという結果が出ていることからも上の抗弁には説得力が欠けます、と。

See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 99.

更に、「スーパーザイズ」の問題も次のように指摘されています。

すなわち、マ○ド○ルドはビッグ・マック購入者に対してそれを「スーパーザイズ化」("supesize")させたがっているということです。「スーパーザイズ化」した食事の中身は、ビッグ・マックと、スーパーサイズ化されたフレンチ・フライと、スーパーサイズ化されたドリンク。合計で1,600カロリーに達します。これは一日の推奨摂取カロリーの実に80%にも達してしまいます。
たった一食で一日の推奨摂取カロリーの80%も得てしまうとまでは、普通の消費者は期待していないという点は、消費者期待基準をクリアできるのかもしれません、とのこと。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 136.

私見

「スーパーザイズ化」を薦めることの倫理的問題は格別、そもそも一食当たりの量が多過ぎるのはファースト・フード・チェーンだけの問題ではなく、アメリカのレストラン全体の傾向だと言えるのではないでしょうか?あるいはアメリカ人の食習慣自体・食生活全体の問題かもしれません。

だとすれば、マ○ド○ルド等のみを責めるのは的外れで、そもそも一食当たりの食事の提供量をまず最初に適切化するという努力を、消費者教育も含めたレストラン全体、食習慣全体の改善目標とすべきなのではないでしょうか。

open-endedに(果てし無く;、限り無く)、他人を責める姿勢は、如何なものかという意見にも、それなりの説得力があるのかもしれません。

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警告表示義務の射程に関する議論

警告義務がどこまで及ぶのか、という射程・範囲の限界は、難しい問題です。

警告義務の射程を拡張することに否定的な見解も以下のようにあるようです。

「警告懈怠事件に於いては、自己責任が強調されます。すなわち、日常生活に関する危険性については、消費者は自らで習得すべきだということです。賠償は健康・損害保険を使えば入手可能です。ですから司法制度は、事故が起きてから、一般に知られている危険性が実はより悪いものだったとクレームする場所ではありません。州によっては、たとえばインディアナ州では、詳細な警告[義務]を遠ざけているのです…。」

Vroom, Fast Food or Fat Food, infra, at 62. なお、この論文は上の記述に関してcitationを明示していませんが、この文の内容は明らかに、コーヒー訴訟に於けるイースターブロック判事の法廷意見から引用していると推察されます。 熱いコーヒーは欠陥であると主張する製造物責任の研究」のページ内の「McMahon 対 Bunn-O-Matic事件(イースターブロック判事)」の項を参照下さい。

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ファースト・フードが不健康なことは常識? --- 明白な危険

一般にはファースト・フードが不健康なことは常識かもしれません。しかし、どこまで危険かという危険度の程度(degree; exent of the danger)に関する知識は消費者には無いので、そこが請求原因として利用可能だという意見があります。

すなわち、前掲「量が多過ぎる問題」にて紹介したように、一日の摂取カロリーの80%もがBig Mac Mealに含まれていることは知られていません

ウエブ・サイトやブローシャーや小さな文字等でカロリー表示をしているとしても、そのような情報はPCが無ければ入手できなかったり、計算機がなければ一食分のカロリーが把握できなかったり、更には虫眼鏡がなければ読めない程に小さな文字で記載されていたりするので、購入判断の際に容易に理解できず、従って情報提供としては不十分だと主張可能である、という訳です。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 136, 140-41.

上のコメント論文は更に、警告欠陥の主張は、中毒性の操作等の主張と比較すれば強いのではないかと示唆しています。何故ならば、カロリー数値や一日あたりの推奨摂取量も含んだ警告・情報は、フレンチ・フライの容器やサンドウイッチの包装紙、ドリンクのカップなどに個別に表示することが可能だからです。更に、商品を購買する際に最も眼に触れるメニューの上にもそのような表示をすべきだと主張しています。

Id. at 149.

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因果関係

因果関係の立証が障害になるという争点は、多くのコメンテイターズが指摘しています。

たとえば以下のように。

喫煙者による肺ガンとの因果関係は、喫煙者の多くが愛煙するタバコ銘柄に対して忠誠が高いことからも比較的容易です。これと異なって、肥満の場合は、唯一の原因を特定することが難しく、更に、全ての原因者を凾ニすることも困難です。
肥満の原因の内、環境が占める割合はわずか60%であり、残りの40%は遺伝上の様々な要素に因るので、πには立証責任が重いものです。

See Vroom, Fast Food or Fat Food, infra, at 62. 

もっとも以下のような指摘もあります。

アメリカに於いて遺伝的因子に大きな変化は近年見られないので、肥満増加の最も大きな原因は遺伝因子ではなく、むしろ環境要因。中でも、@運動をしなくなったこと、Aファースト・フードのチェーン店が急激に増加したこと、及び、Bファースト・フード業界に於ける「スーパーサイズ化」("supersizing")の三要因が最も大きい。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 131-32.

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中毒性

ファースト・フードの中毒性云々という論議に資する記述として、以下を発見しましたので参考までに記録しておきます。

心理学者は、process addictionというものを認めています。たとえば飲酒中毒は、文化、個人の遺伝、および利用可能性によって影響を受けた中毒であるという認識です。 不健康な食品も、容易に利用可能であり、多く宣伝され、かつ安価であるために、食品の親しみ易さからprocess addictionの前提条件になり易いのかもしれません。 もっともprocess addictionはsubstance addictionよりも容易に止めることが可能です。

See Vroom, Fast Food or Fat Food, infra, at 64.

更に以下のような指摘もありました。

研究により、人は、脂肪分と塩分を渇望(crave)するものだということが判っています。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 142.

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操作 Manipulation

上で紹介したような、脂肪分と塩分を渇望する人の嗜好から、フレンチ・フライを揚げる際の温度をわざと低く設定してより多くの脂肪分吸収させて人々が更に渇望するように操作している、という主張も紹介されていました。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 142 (Banzhaf--π側の活動家弁護士--の主張を出典表示しながら).

もっとも、陪審員は中毒ほどの責を認定しないであろうから弱い主張である云々、と上のコメント論文は分析していますが…。

Id. at 149.

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子供を標的にするマーケティング

子供時代に得た食習慣は、人生を通じて継続すると言われています。しかも子供は特に宣伝広告に無防備なので子供を標的にした宣伝広告が効果的だとも。

家族に於いて子供自身には何を食べるかという決定権・主導権が無くとも、子供が行きたがればその親も引きずられるとも言われています。 たとえばマ○ド○ルドの創設者は、以下のように言ったといわれています。

「私どものTVコマーシャルを気に入ってくれた子供は、お爺さんとお婆さんをマ○ド○ルドに連れて来てくれるから、顧客をあと二人もたらしてくれるのです」と。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 119.

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ファースト・フード業界のマーケティングによる子供の食慣習への悪影響

多くの文献がこのような指摘をしている中でも、特に、司法府の長たる連邦最高裁判所クラレンス・トーマス判事の以下の意見を紹介しておきます。

「過去数十年の間に於ける肥満の増加には多くの原因があるけれども、重要な要素は、膨大な量の高カロリー、高脂肪食品が手に入るようになって来たことである...。そのような食品は、ファーストフード会社によって積極的にマーケティングされ、かつ、販売促進されて来たのである...。更に、ファースト・フード会社は子供の食慣習を変えさせることに成功したという重要な証拠もあるのだ。」

出典: Lorillard Tobacco Co. v. Reilly, 533 U.S. 525, 587-88 (Thomas, J. concurring)(訳は評者)(強調は付加).

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判断能力の劣る子供向けマーケティングを批判するアメリカ法律論文

タバコが青少年へマーケティングすることと同様な問題をファーストフードも抱えている、と以下の論文が指摘しています。

John Alan Cohan, Obesity, Public Policy, and Tort Claims against Fast-Food Companies, 12 WIDENER L. J. 103, 112 (2003).

See also Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 119.

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特にマイノリティーも標的あるいはヒガイシャになっているという指摘

ファースト・フードは、社会経済的な低階層(the lower socio-economic classes)およびマイノリティーに不均等に多く消費されているという指摘があります。そのため、社会に於ける最弱者(the most "vulnarable" members of our society)を守るべきという問題もあるかもしれません。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 115.

すなわち1998年のバーガー・キングの売り上げの内、実に30%もがアフリカ系アメリカ人とヒスパニック系であり、同年のマクドナルドの売り上げの25%が同様であったと指摘されています。  /  更に、マイノリティー居住区に広告を出したり、ヒスパニック系に訴求すべくLAに於いて「"Fiesta" menue」を出したりしているという指摘もあります。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 117-18 & n.30 (Resina Austin, Bad for Business: Contextual Analysis, Race Discrimination and Fast Food, 34 J. MARHSALL L. REV. 207, 230 (2000)等を出典表しながら指摘).

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過失あるマーケティング≠フ法理 Negligent Marketing

ファースト・フード肥満訴訟の先例とも言うべき訴訟類型として、「negligent marketing」という法理がアメリカでは議論されています。以下、同類型に関する裁判例を例示おきましょう。

【銃の販売】

Eslinger v. Kmart Corp., No. 2:97-CV-0981-ST (D. Utah Sept. 12, 2001).   明らかにmentally disturbedで大量に薬物を与えられている消費者に対して銃を販売し直後に自殺した事件に於いて、販売をした凾ェ有責と認定されました。

【____】

To Be Constructed.

【____】

To Be Constructed.

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子供を標的(ターゲット)にしたファースト・フード業界によるマーケティングとして問題視される例

例えば、インターネット上のウエブサイトに於いて子供の興味を惹くようなコンテンツを仕組んで、子供達を四六時中ファーストフードへ誘導するようなマーケティングが非難の対象となり得ます。  以下のような紹介もありました

学校の廊下やスクール・バスに広告を出して、学校児童を標的にした宣伝を最初に行ったのは、1993年のバー○ー・キ○グでした。他のファースト・フード企業も直ぐにこれに倣って、クラスルームTV等で宣伝を開始。遂には学校昼食のための支店までも学校に開店させた程でした。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 145.

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犯罪に使用された銃の販売主企業が責任を課された裁判例からのアナロジー?! (グリシャム原作の映画「ニューオーリンズ・トライアル」)

以下の裁判例は、原審にて、犯罪者等が使用するようなマーケティングをしたことにより企業が責任を課された例です(しかし以下の出典表示にあるように上訴審にて覆されていますが)。

Merrill v. Nabegar, 89 Cal. Rptr. 2d 146, 156-57 (Ct. App. 1999), rev'd, 28 P.3d 116 (Cal. 2001).

もっともニューヨーク州でも銃販売剔、を有責とする原審が覆されて、なかなかnegligent marketing等は認容されないようです。

Hamilton v. Beretta U.S.A. Corp., 96 N.Y.2d 222 (2001).

Pelman事件のπは、この原審に於ける法理と似たような考え方(negligent marketing)で、子供を標的にした凾フマーケティング自体を非難しているようにも読めます。

なお、前掲の原審のような事件は、ジョン・グリシャム原作の映画「ニューオーリンズ・トライアル」(ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン出演)に於いてもテーマにされています。(ちなみに原作版小説『陪審評決』では、タバコ訴訟がテーマでした。)

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子供を標的(ターゲット)にした広告宣伝規制の動き

出典: Susan Bartlett Foote & Robert H. Mnookin, The "Kid Vid" Crusade, 61 PUB. INT. 90, 92 (1980).

See Note, Behavioralism, and Counteradvertising, infra, at 1172-73.

出典: Federal Trade Commission Staff Report on TV Advertising to Children (1978), reprinted in Advertising Age, Feb. 27, 1978, at 73-77.

出典: Fast Food Firms Face Screen Test, The Guardian Newspaper, Oct. 23, 2003, at 19.

スエーデンでは12歳に至らない子供を標的にしたTV広告を禁じており、EU全体にもその規制を拡大する件についての分析は、以下を参照。

Andrew Oliver, Note, The Proposed European Union Ban on Television Advertising Targeting Children: Would It Violate European Human Rights Law?, 20 N.Y.L. SCH. J. INT'L & COMP. L. 501 (2000).

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タバコ広告宣伝規制の先例からのアナロジー

かつて、あるタバコ銘柄のキャラクターである「ジョー・キャメル」は、ミッキー・マウスと同じ程度にまで子供に知られていたことも問題になり、自粛要請訴訟が提起されました。

Mangini v. R.J. Reynolds Tobacco, 875 P.2d 73 (Cal. 1994)(タバコ会社と広告会社に対する未成年者向け広告宣伝の差し止め請求訴訟。広告宣伝に対する既存の連邦法規制が専占・プリエンムプションするゆえに訴え棄却を求めた凾フ申立を州最高裁が却下。法廷意見の中でミッキー・マウス同様に知られている点も指摘している).

なお、次のような指摘もあります。

子供への悪影響から「ジョー・キャメル」が看板から外されました… 「ロナルド・マ○ド○ルド」も同じ位に可愛いのですが、子供には理解できない危害から社会は子供を保護すべきであるという目的から見れば、両者はとても似ているのです、
と。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 145.

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広告宣伝規制の合憲(表現の自由の保障)基準

有名な「セントラル・ハドソン」テストと呼ばれる判例法上の基準をクリアしなければ違憲立法になり得ます。同テストの概要については、評者の以下の論考を参照下さい。

平野 晋 「迷惑メール問題と米国に於ける分析」『日本データ通信』127号、53頁、76−81頁(平成14年9月).

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訴訟は社会改善のための良き手段である、という意見:「司法積極主義」 Judicial Activism

本件のようなファースト・フード肥満訴訟に加えて、拳銃訴訟、タバコ訴訟、等をまとめて、「社会問題不法行為」("social issue torts")と呼びます。社会的な目的達成の為に、π側弁護士が訴訟・不法行為法を用いるという意味です。

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 113 n. 3.

タバコ産業に対する訴訟活動でも熱心な(「タバコに於けるラルフ・ネーダー」--Ralph Nader of the Tobacco--と呼ばれている)公益弁護士(public interet lawyer)であるジョージワシントン大学のJohn F. Banzhaf III教授は、以下のように述べています。

「多くの新しくて革新的な法理も、最初は常軌を逸っしたように聞こえるものだ。 ...。[しかし]社会的変革を実現するための最も実効性のある方法の一つは、人々を訴えることなのだ。...。 [仮に訴訟に頼ることなく]もし私が議会に行って『肥満に関して何かをなすべきである』と言ってみたところで、[変革を実現する]チャンスはとっても少ないのだから。」

出典: Judith Weinraub, The Blame Game; Is It Our Fault We Like Bad Fats? Washington Post, Dec. 10, 2003, at F01(訳は評者)(強調は付加).

ちなみに彼は、次のようにも呼ばれているとのこと。「食品ナチ」(Food Nazi)、「カロリー・コップ」(Calorie Cop)、「東海岸で最も速撃ちな男」(the fastest legal gun in the East)、「リーガル・テロリスト」(Legal Terrorist)、「リーガル爆弾投擲者」(a legal bomb-thrower)、等々。

出典: The Man Who Is Taking Fat to Court, The Herald (Sydney), June 14, 2002、他

___________________________.

なお、ファースト・フード分野では、砂糖とか塩分含有量、またはカロリーの上限といった法規制がありません。更に広告規制や[]子供向けターゲット広告の規制もありません。その点が、既に法規制のある銃やタバコよりも、訴訟による矯正が必要であるという主張にもつながるのかもしれません。

See Mason, Doctorinal Considerations, infra, at 101.

なお、上のJudicial Activismのような立場は、現代不法行為法学に於ける「社会正義論」(Social Justice theory)に属するものと思われます。社会正義論については、評者のウエブサイトの「現代不法行為法」を参照下さい。

三権分立に反しても構わないという意見

なお、司法積極主義は三権分立主義に反するという次項の意見に対しては、司法積極主義を肯定する以下のような主張が見受けられます。

See Note,Targeting Unpopular Industries, infra, at 1383;  Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 127-29.

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三権分立に反するという意見

訴訟に頼って政策を実現しようとする司法積極主義的なやり方に対しては、以下のような批判があります。

See Note,Targeting Unpopular Industries, infra, at 1381-83.

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 ファースト・フード企業に責任を課すことに批判的論文

以下の論文は、ファーストフード訴訟に批判的な立場から、以下のように主張しています。

Richard C. Ausness, Tell Me What You Eat, and I Will Tell You Whom to Sue: Big Problems Ahead for "Big Food"? 39 GA. L. REV. 839 (2005).

  1. 肥満対策の政策執行に対しては、訴訟・司法府を通じて行うよりも、むしろ、立法&行政府による規制の方が望ましい。
  2. 莫大な訴訟費用と損害賠償が食品産業と関連産業に課題な負担を課してしまう。
  3. 反肥満訴訟は自律の原則(principle of autonomy)と自己責任personal responsibility)を崩壊させ、アメリカ全土に広がりつつある他人を非難する文化を強化させ(reinforce the culture of blame that is spreading throughout our society)てしまう。

Id. at 883-93.

上記1.については、以下のように指摘している点に説得力があるように評者には思われます。

[T]he case-specific naure of the litigation process induces judges and juries to focus on narrow issues and directs their attention away from broader social or safety concerns.

Id. at 886 (emphasis added).

すなわち上記3.について、以下のように指摘している点が興味深いところです。

[I]f these lawsuits are successful, they will reduce the choices available to consumers.

Id. at 884 (emphasis added).

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ファースト・フード問題を指摘する書物

ペルマン第一事件」の法廷意見に於いて引用されているように、以下の書物が有名。

ERIC SCHLOSSER, FAST FOOD NATION (2002).
邦題は『ファーストフードが世界を食いつくす』(楡井 浩一 訳)
「子供に狙いを定めて脂肪分と糖分過多な食品を販売促進する全ての広告宣伝を、議会は即座に禁止すべきである。30年前、議会は、タバコの宣伝広告をラジオとテレビに於いて禁止した。公衆衛生対策としてである。 ...。この対策以来、喫煙は減少して来た。不健康な食品の子供に対する宣伝広告を禁止すれば、打ち崩すことが困難なだけでなく生命への危険も伴う食慣習を、抑制することになるであろう。更にこのような禁止を実施すれば、ファーストフード・チェーンも子供向けのレシピを変えることになろう。[すなわち、]「ハッピー・ミール」(Happy Meals)の脂肪分を大幅に減少させ、全国的に子供達の食物摂取に即効性のある結果をもたらし得るのだ。合衆国の子供の内の90%以上が、毎月、マ○ド○ルドを食べているのだから。」
同書262頁(訳は評者)(強調は付加).

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関連映画

「スーパーサイズ・ミー」(モーガン・スパーロック監督&主演、2004年作品)

自らの体を実験台にして、ハンバーガーを一ヶ月食べ続けることと肥満との因果関係を立証しようとする映画。

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業界からの反論

肥満の自己責任を外食産業のせいにする、外食産業はスケープゴートにされた、という趣旨の反論の例は以下の通りです。

全国レストラン協会の協会長の言葉: 「行き過ぎた摂取を控えることと、食事のバランスの必要性を、我々は強く信じている。...  目の前に出された食事を全部平らげる必要は無いのである。」

出典: Robert Dodge, Battle to Reduce Nation's Waistline Overwhelms Political Landscape, The Dallas Morning News, Nov. 8, 2003 (訳は評者).

食品に対してネガティヴなイメージを作り出すようなラベル添付義務化に反対しつつ発したマ○ド○ルド・ビジネス・デェヴェロッピング・グループ社の社長の言葉: 「罪、恐怖、および心配といったものは良きモチベーションたり得ない。だからこそ、ほとんどの喫煙反対キャンペーンや飲酒運転反対キャンペーンが人々の行動を変えないのだ。

出典: Andrew Martin, Nutrition Labels for Restaurant Meals Urged; But Firms Doubt It Will Curb Obesity, Chicago Tribune, Nov. 21, 2003, at 9, zone C (訳は評者).

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訴訟を封じる立法の動向

CBSニュースによれば、レストランへの提訴を禁じる以下の連邦法案が、下院で可決されました。 [上院は未だです。]

THE PERSONAL RESPONSIBILITY IN FOOD CONSUMPTION ACT (俗称は「チーズバーガー法案」"Cheeseburger Bill")

出典: House Passes 'Cheeseburger Bill', CBS News.Com, available at <http://www.cbsnews.com/stories/2004/03/10/health/main605157.shtml>(last visited on Dec. 24, 2004).

なお、同記事の中では禁止法推進派のカリフォルニア州選出共和党議員が、大衆による愚かな摂取選択と運動不足の責を、ファースト・フード・チェーンと父ちゃん母ちゃん食堂(mom-and-pap restaurants)が負わされるべきではないとして、以下のように述べたと報じています。「自己責任」か他人の責任か、を巡る興味深い事例である象徴的な発言ではないでしょうか。

アメリカ人は自ら死に至る食生活をしておきながら、誰かが非難されるべきだと獲物を探しているのだ」と。

2004年10月現在に於いての訴訟を封じる立法状況は、14の州にて前掲の種類の訴訟を禁じる立法を試み、加えて4州が検討中とのことです。連邦議会も検討中で、これら規制立法は「Commonsense Consumption Act」と呼ばれています。

多くの法案に影響を及ぼしていると見られているのは、全米レストラン協会(National Restaurant Association)による模範法[案]とのこと。

模範法案の骨子は、食品関連業界に対し、食品を長年摂取して来たことによる肥満を理由とするような判例法上の訴訟を禁じることにあるようです。もっとも消費者保護の特別制定法による訴訟は禁止の除外になるけれども、その場合でも訴訟を許すのは故意に業界が違反したような場合に限定したいようです。更に、提訴が許される場合にも、訴状には具体性をもって記載しなければならないような制限を課しているとのこと。

See Jones, The Illinois Commonsense Consumption Act, infra, at 1022-26.

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アメリカ市民の反応

ギャロップ社による2003年7月21日の調査結果によれば、89%の回答者が、ファーストフード産業は食事関連問題に対して法的な責任は無い、と回答しています。

出典: Weight Loss Expert to Testify in Congress on the Role of Personal Responsibility in America's Obesity Debate; Expert Testimoney Strives to Protect the Food Industry from Future Abusive Litigation, Business Wire, Oct. 16, 2003, availavle at www.businesswire.com.

多くの陪審員も、Pelman事件のようなπを支持しないであろう、と以下のように「法律タイムズ」紙も紹介しています。

「ディフェンス・リサーチ・インスティチュートが発表した陪審員の動向調査によれば、ファースト・フード会社に対する訴訟は怪しい、と圧倒的過半数の陪審員が考えている。同調査は、2,119名の対象者の内、89%がファースト・フード訴訟を支持しないと答え、83%は常習性のある食慣習に対してファースト・フード会社には責任が無いと考えている。」

出典: Mane Beaudette, Junk Science, Legal Times, Oct. 20, 2003, at 3 (強調は付加)(訳は評者).   もっとも同記事によれば、陪審員達は同時に、子供を標的にしたファーストフードの宣伝をすべきではない(56%)と回答し、かつ、ファーストフードはその摂取により生じる危険性についてお客に警告すべきであると多く(36%)が思っている、と報じています。

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「自己責任」対「パターナリズム」

賛否両論ある肥満訴訟。訴訟推進・賛成派は「パターナリズム」の重要性を重んじ、反対派は「自己責任」の倫理を主張しているようでもあります。

そのような対立的な構造を、以下、上手く説明してくれています。

ファースト・フードが一般に体によろしくないことは常識です。しかも刄tァースト・フード企業はその塩分が高くて油分も多すぎるフレンチ・フライをπに一度も食べるように強要していないのです。πは自らの自由意思でファースト・フードを選んだのです。
しかし、皆さんは、以下を自問してみるべきです。π達はインフォームド・チョイスをしたのだろうか、インフォームド・チョイスが可能だったのだろうか?と。インフォームド・チョイスができないとすれば、ファースト・フード企業はファースト・フードを消費することから不可避的に伴う危険性を開示する大きな義務があったのではないでしょうか?…。ファースト・フードがタバコのように化学的に中毒性があることは未だ証明されていませんが、心理的な中毒、すなわち「渇望」("craving")があるという証拠はあります。ファースト・フード企業は若年層と社会の最弱者とを標的にすることで、法的な境界は越えていなくとも何らかの倫理的な限界は超えているのではないでしょうか?

See Comments, Take That Tabacco Settlement and Super-Size It!, infra, at 116.

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「父性主義」(paternalism)への嫌悪「行動主義」的分析と「自己責任」

以下のハーヴァード大学法科大学院紀要掲載の学生ノート論文は、「行動主義(認知科学)」的な分析手法を用いつつ、「パターナリズム」(父性主義)への嫌悪という視点から、国民の食生活上の嗜好に対して政府が強い規制をすることへの抵抗感が存在する、と興味深い指摘をしています。

Note, The Elephant in the Room: Evolution, Behavioralism, and Counteradvertising in the Coming War against Obesity, 116 HARV. L. REV. 1161 (2003).

利用可能性ヒューリスティック」(avaulability heuristic【評者注1】的な効果を利用して宣伝を繰り返すことにより、その商品が思い出され易くなって選ばれ易くなります。 不健康な食物摂取により生じる危険性への認識が、家族に優しい環境を宣伝することで前向きなassociationsを生み出すことによりマ○ド○ルドはaffect heuristic【評者注2】を利用しています。
See Note, Behavioralism, and Counteradvertising, supra, at 1168. 
【評者注1&2】 これらの概念については、評者の「法と認知科学/行動主義」のページを参照下さい。
宣伝による操作(manipulation)は、人が製品を選ぶ際の、credence attribute(消費した後に専門家による助けがなければ評価できない特性、たとえば食品の健康上の効果等)に関して消費者を誤導(misleading)するように用いられがちです。何故なら、この製品特性は消費者自らでは評価できないものだからです。  /  更に、操作が効き目を発揮する製品の種類は、experience attribute(消費した後に評価することができる特性、たとえば味やperformance)に於いては直ぐに満足を人に与えつつ、credence attributeに於いてはコストが遅れて生じるタイプの製品です。何故なら人は、experience attribute上、即座に好ましい効果を生じる製品ならば、その[良くない]結果が長期的には生じ得るとしても無視して使い続けがちだからです。
外食率が増えているアメリカ人にとっては、おそらくはお腹が空いているから即座に食べられるファーストフード店に入ると想定されます。すると、まずはその空腹を満たすことを先決に行動しますから、自宅に於いて時間を掛けて自ら食事を作ってから食べる場合よりも、遅れて生じる肥満という効果を考慮に入れない傾向が高まります。 / 更に、外食では、自宅で食事を作る際に比べて、素材に関する情報が乏しく、健康に対する配慮が少なくなってしまいがちです。
See Note, Behavioralism, and Counteradvertising, supra, at 1169-72.
FTCが広告規制をしようと試みて議会・世論の賛同を得られず失敗した理由は、子供の糖分接収問題は、家庭の親が管理すべき(parental [responsibility])であって、政府の範疇(governmental responsibility)ではないと思われたからです。この失敗例は、自己責任(personal responsibility)の範疇に政府が介入し過ぎた代表例でしょう。効果的な規制をする際の最大の障害は、反パターナリスティックな政府への嫌悪感です。自律的な選択権を奪うような徹底的な規制オプションは望まれず、個人に対しては食事習慣を変える選択権を付与するだけで後は個人による自律的な選択権に任せるような規制の方を好むという世論調査結果もあります。
See Note, Behavioralism, and Counteradvertising, supra, at 1172-73.
パターナリズムとは、人々が自らの物の[選択権の]自由への介入です。パターナリズムは、「強い(storong)パターナリズム」と「弱い(weak)パターナリズム」の間のスペクトラムで表すことができます。強いパターナリズムは個人の選択権を許さず、弱いパターナリズムは選択する能力の欠如に基づきます。強いパターナリズムでは、きちんと自らの利益を認識した上でその利益を向上させる自発的選択能力を有する個人が、損をします。逆に弱いパターナリズムでは、完全に合理的・自律的に行為を自発的に選択する個人的な能力を欠く者が、得をします。[普通は]弱いパターナリズムの政府規制の方が好まれます。  /  政府規制による介入から得られる利得が、侵害される個人の自立性よりも比較的に大きい場合には、支持を得られ易いものです。たとえば、シートベルト着用の強制化規制は、シートベルトをしないという、自律的な選択権の権利は着用強制化の利得に比べて大きなものではないので、支持を得られています。
See Note, Behavioralism, and Counteradvertising, supra, at 1173-74.
食習慣は完全に自発的で個人の自我の感覚・self-idenityと密接に結び付いていると思われているからこそ、食習慣への規制に対しては反パターナリスティックな嫌悪感が示されるのです。  /  より良い食事のために不健康なスナック菓子に課税しようという提案に対しては、33%しか支持を得られないのに、オートバイへのヘルメット着用義務化は81%もの支持が得られたことからも、上の点が効いています。  /  もっとも前述のような商業広告宣伝によるヒューリスティックな消費者の反応から判断すれば、人の食習慣に対する好みは「新の嗜好」("true" preferences)を示しているとは限らず、したがって不健康な活動がself-identity / a free willの表れではないとい立場を採れば、政府規制も肯定化できるでしょう。
See Note, Behavioralism, and Counteradvertising, supra, at 1174-76.
人々が反パターナリスティックな反発を示している現実を踏まえるならば、政府規制は弱いパターナリズムにすべきでしょう。すなわち、自律的な判断を疎外する障害を取り除くことを目指すべきであって、市民に対して政府が決定を押し付けるべきではありません。更に政府規制は、個人のself-identityの核心部分を尊重すべきでしょう。 / 直接規制ではなく間接規制にすべきであり、介入が少なく、啓発的なものにすべきです。公共の健康を促進するという目的や、消費者は本当は健康的な食習慣を願っていながらも商業広告宣伝によってその本当の願いがヒューリスティックに隠れてしまっているという問題を除去するという視点から、政府による「対抗宣伝」(conter-advertising)(民間の宣伝が消費者の嗜好を操作するために用いるのと同じメカニズムを用いるけれども、利益の為ではなく公共の健康への配慮から為される宣伝)も許容されるでしょう。
See Note, Behavioralism, and Counteradvertising, supra, at 1176-84.

なお、「パターナリズム」に関する更なる分析については、以下のページを参照下さい。自己責任≠ノ関する考察

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「父性主義」対「自己責任」Paternalism versus Personal Autonomy

以下も参考になります。

Richard C. Ausness, Tort Liability for the Sale of Non-defective Products: An Analysis and Critique of the Concept of Negligence Marketing, 53 S.C.L.REV. 907, 962-63 (2002).

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主要参考文献・主要出典